米英詰め合わせ
巣立たない阿呆鳥(英一人称)
知っていたよ。雛鳥ってのは、いつかは巣立って行くものだって。
しかもコイツときたら何百年も前に、荒れ地で鍛えられた屈強な後脚で俺に蹴りを入
れて飛び立った、ジャンボジェット並にバカでかいアホウ鳥で。
俺の腕の中に収まっていた筈の小さな身体は、怒りに任せて強く壁にたたき付
けた両翼で俺を挟んで閉じ込められる位にまで成長してしまった。
そう、成長してしまった……筈、なんだけどなぁ。
泣く泣く手放した親心なんて顧みずにさっさと飛び立って行った、親不孝な癖に。
こいつはたまに、こうして巣を間違えて戻って来る。しかも、わざわざ俺の上に。
「おいアルフレッド、いい加減起きろって!」
声と共に、ベッドに入ったまま、タオルケットを一気に自分の顔の上まで引っ張り上げた。
「ふひぃ……」
その摩擦によって恐らく、結構な強さでタオルケットに載せてた頬を擦った筈の頭は、豚か何かのような寝言を漏らすだけで、俺の腹から退く気配がない。
はぁ、やれやれ……と、溜息を吐き。俺は被ったタオルケットごしに天を仰ぐ。
大分前に巣立った筈の雛鳥は今日も、寝てる間に戻って来た。しかも、俺の腹
の上に。
ついでに、昔からのテコでも動かない寝起きの悪さを引き連れて。
「全く、君は……帰り損ねた妖精さんかっ!!」
「ばふっ!!」
不機嫌を込めて顔の上から一気に跳ね起き、ついでに跳ね上げたタオルケットの端は、ばふんとアルフレッドの上半身を包んだ。
というか、上半身以外ベッドに乗っていないじゃないか! アホウ鳥め、風邪
をひいたって知らないからな。
呆れ半ばでタオルケットから両足を引き抜こうとした所で。
「……ちゃんと起きるから、その気持ち悪い例えは撤回してくんない?」
しっかと両足を捕まえられてしまう。
「じゃあ君は、その狸寝入りに対する謝罪を俺にしっかりすべきだな」
言って、軽く足先で蹴り上げると、巨大なタオルケットの固まりは「分かった」と一言答えて動き出し――何故だか俺の上にドンと、のしかかって来た。
「なっ、何のつもりだアルフレッドっ!!」
「……違う、俺は、正義の味方タオルケットマンだっ!!」
……しまった、まだ寝ぼけていたか。
顔の無いタオルケットの固まりはフゴフゴと篭った息を吐きかけて来る。正直、気持ち悪い。