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それではお元気で(静雄×臨也/鬱)

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こつん
テーブルでささやかな音を立てたそれを、俺はただ呆然と見つめることしか出来なかった
返却された俺のマンションの鍵は数えるほどしか使われることなくただのゴミになった




「勘違いだったんだよ」
忌々しそうに彼は目を閉じた。
「俺にはお前しかしないんだって思いこんで、この3ヶ月無駄にしちまった」
そっか、シズちゃんにとっては俺と寄り添って生きたこの92日間が限界だったわけだ
でも俺は君と出逢った7年を含めて、これからの幸福な現実を夢想してしまっていた
しくじったなぁ 折原臨也
この俺が何のためにこれまで利益も犠牲も度外視して彼の傍から人を遠ざけてきたと
思ってるんだよ
浮かれてしまった そう俺は浮かれまくってた
俺の重たすぎる想いを受け入れてくれたシズちゃんの単純さとか人の良さを過信しすぎて危機感を忘れてしまった


情報を操作する時間を惜しんでシズちゃんに使った
人一人を陥れ操る時間を惜しんでシズちゃんに使った
結果がすべてのこの商売で、俺は優先させるべきものを意図的に間違えた


それが因で、今俺が命を狙われ既に複数回襲われてて明日をも知れない身の上だと
してもそれは俺の落ち度だ シズちゃんには関係がない


ああ、俺が醜い嫉妬心なんて表に出さなければ、今頃俺たちはキッチンに積まれた俺の
お手製料理を美味い不味いなんて言い合いながらつつきあってたのかな
お付き合い3ヶ月記念とか言ってこっそり内緒で用意してたプレゼント、お揃いの
パスケースをやっと渡せたなんておどけてたりしてたのかな
それともシズちゃんにとってこれは予定調和だったんだろうか


迷い子のように途方に暮れた俺から目を逸らさないシズちゃんの顔には疲労が浮かんで
おり目の下には薄っすらと隈ができていたが、綺麗なはしばみ色した瞳は揺れていなくて、
それに俺はひどく安堵した
俺が好きなのは顔だけじゃないけど、でもやっぱり惹かれたのはこの顔と表情だった
人に媚びない、孤高の獣みたいで俺は大好きだった。今もだいすきだ
相手をどう思うのか誤魔化せないその馬鹿正直な表情は、俺の前ではいつも不機嫌そうに
強張っていた
先日渋谷で見かけた時の、あの女と並んで歩いていた時みたいな和らいだ微笑みなんて
見たことがなかった
シズちゃん、あんな顔できたんだね  約10年色んな君を見てきたけど、それがすべて
ではなかったんだね
俺の前では滅多に見せない私服姿ではしゃぐ君の笑った顔は、その部分だけ切り取って
フレームに収めて眺めてたらもう一生引きこもっていられるんじゃないかってくらい
魅力のあるものだった

その何気ない君の日常の姿に滑稽なくらい動揺した俺が君にしたことは、深夜のアポなし
訪問とか30分に一回の電話メールだとか
何とか気を引きたくて、サプライズを狙って手を尽くした
だって君を驚かせて怒らせる以外に、俺から君に出来るアクションてないからね
本当は一緒に映画見たり買い物したり散歩したり手を繋いだりしてみたかったな
でもシズちゃんが俺にそれを求めてないって知ってたから、俺は変わらずナイフを
振りかざし飛んでくる自販機や標識を掻い潜って君を貶め続けた
でも他になにかやりようはなかったのかな 
どちらかがほんの少し歩み寄れなかったのかな
散々口にした 「愛」 という言葉も 「好き」 って言葉も、みんな本気で真実だったんだ
けど、今となっては何もかもが手遅れなんだろうね

なんで俺は、幸福そうに笑うシズちゃんを見てみぬ振りしてやり過ごせなかったのかな
本来なら俺になんて目もくれない愛したがりの愛されたがりなシズちゃんが妥協して
妥協して妥協して 苦渋の選択で俺でいいって言ってくれたのに
どうして俺は、俺にも笑いかけて欲しいなんて高望みしちゃったんだろう
馬鹿だな俺 死んだらいいのに


「じゃあな」


と彼は告げた。
敗者は勝者に背を向け自ら幕を引く
踏み出した先は光に満ちてるだろう?
俺が長い長い時間をかけて施した作為的な光に君は気付かないまま、やがて本物の光が
照らす場所へと旅立ってしまう
ならそれまでの間だけでいい、シズちゃんの身体には残らない無数の傷跡 
これからまだ増えるだろうその数を少しでも減らせたらいい
今まで受けた傷が少しでも癒せたらいい
君の気付かない処に俺の残したささやかなひっかき傷が一生消えないでくれたらいい
そう思って俺なりに頑張ってきたけど、結末はこのとおりだ
シズちゃんの傷は癒えないまま、俺はかすり傷一つも残せないまま


俺とシズちゃんの物語は大団円を迎えました