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それではお元気で(静雄×臨也/鬱)

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これで良かったんだよな
俺はもう何百回としてきた自問自答をまた繰り返す
俺があいつから離れれば あいつはもう危険な目にあわない
そうだろう? あいつはこの十年近くを俺だけのために費やしてきたんだから

臨也の顔や肩や全身のあらゆる部位に残る傷はほとんどが俺のつけたものだ
俺が衝動的に殴り蹴り罵り打ち下ろし動かなくなったあいつを何度見てきたんだろうな
傷が癒えるたびに臨也はヘラヘラと笑いながらもう平気、と近づいてきた
擦過傷や青痣の残った腕を躊躇うことなく伸ばして、待ち焦がれたように俺に触れる



でも本当はこんなこと嫌なんだろう
もっと穏やかに 笑ったりしたかったんだろ?
俺だってお前と映画見たり買い物したり散歩したり手を繋いだりしてみたかった
でもそのたびにお前の傷が増えていくのが耐えられなかった
俺が拳を振るうたび、お前は自分のやり方が間違っていたのかと気に病み、
己を犠牲にすることも厭わずに軌道修正しようと躍起になる
傍にいるのが当たり前で、いつしか俺もお前もその不毛な関係に慣れきってしまう
俺の一番恐れているのは其れだった

お前が俺を捨ててくれないか、見損なってくれないかと俺は何度もお前の尊厳を
踏みにじるような行為をする
そしてそれを寂しそうに微笑みながら許すお前に絶望してまた繰り返す 
堂々巡りだ

好きだった 好きなのだ あの馬鹿が
子供っぽい仕草も舐めきった声もたまに見せるはにかんだ笑顔も
それは届かないあいつに対する 『憧れ』 であり、 『嫉妬』 であり、 『愛』 だった
何よりも大切で何よりも愛しい 守りたい 傷つけたくない 傍にいたい
本当は嫌だけど、俺のつけた傷を癒してくれる誰かを見つけてくれたら良いと思う






なあ臨也
俺はお前が好きだ
だから離れる お前の前から消える
このまま池袋を離れて 頭のいいお前でも手の届かない場所へ行く






お前のいない現実を知って 俺が壊れてしまう前に