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折原臨也の純情

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最近の折原臨也は機嫌が悪い・・・そんな噂がダラーズのHPに書き込まれたのは、つい4日ほど前のことだった。
そしてこの4日の間に、その噂に関する情報が次々と舞い込んでくる。
曰く――、女子高生を路上でこっぴどく振っていた、依頼人の家族仲を引き裂いた、ドラッグを売りつけている、依頼された会社のライバル会社に情報を売った――などなど。
信憑性のない、あるいは自らがその目にあったのだという―これも結局は信憑性はない―情報をダラーズの創始者たる少年は、ディスプレイの上に眺めていた。

「臨也さん・・何する気なんだろう・・・」

そもそも情報屋としてアンダーグラウンドに住んでいるはずの人間の情報が、こんなにも表層部に掴まれているのはおかしい。
つまり、竜ヶ峰帝人はこう考える。

(自分に関する偽情報を流して、本来の動きを誤魔化そうとしている――)

「の、かな?・・・・でもドラッグ以外は普段からありえそうだよなぁ・・」

ふぅっと息をつき、ざわざわと根拠のない噂話の蔓延する電脳の世界を閉じた。
欲しい情報がある時、状況を動かしたい場合は、その電脳世界を利用する帝人だが、その中の知識をすべて信じることなど当然できない。
つまり、結局は自分の主観によって、その情報は正しいと思いこまれるものなのだ。
帝人にとってこの4日間の臨也の動きと言えば

「勝手に僕の家にあがりこんで、夕飯食べて、帰ってたと思ったら、モーニングコールが来る・・」

いざ言葉に出すと、心底うざかった。
この4日間を思えば自然と涙が浮かんできそうだ。
帝人は自他共に認める凡人である。普通でないのは肩書きの一つだけだ(それも知っているのはごく一部のみというオマケまでつく)
まだ高校生という人生経験も少なく、親や教師以外の大人と触れあう機会もそうそうなかった少年にとって、折原臨也という人間の行動は、まさに奇行であった。



「おかえりなさい、帝人君。今日は早かったね?委員会が先生の都合でなくなったんだよねーおめでとう!これで溜まってた洗濯物ができるね?今日から明日にかけてずっと快晴だよ」
「・・・・・・うわぁ・・・」
「ははは、ひどいなぁ。泥棒が入らないように見張っていてあげた俺に向かって」

玄関開けたら折原臨也。
まさに5秒もかからなかった。すぐそこにいた。
この暑い中、扇風機すらない蒸し風呂のようになっていた部屋の中で、コートも脱がずに座っている。
サマーコートなのだろうが、見ているだけで暑苦しい。

「・・何してるんですか臨也さん」
「お腹すいたから。あと帝人君の顔が見たかったから」
「僕の顔なら今見ましたよね。ご飯ならどこか食べに行ってきたらどうですか」
「そうだね、高校生だしたまには外食もしたいよね。どこに行こうか?露西亜寿司?焼肉とか?あ、鍋でもいいよ暑いけど」
「臨也さんと2人という状況に耐えられないので、ぼっちでどうぞ」

とにかくもカバンを降ろし、ネクタイを緩める。
その間もつらつらと惰性のように話していたが、そこで突然会話が止まった。

「臨也さん?」

不自然に思い、背後を振り返れば、見たことのない真剣な表情でこちらを見ていた臨也と目が合った。
一瞬ビクンっと自分の肩が跳ねたのがわかった。
何しろ臨也は美形である。無表情になるとそれがはっきりとわかる。
というより、迫力がありすぎて、逆に怖い。

「・・・帝人君さ、」
「なんですか・・?」

そこでチラリと臨也は視線をそらした。
同じようにそちらに目を向けてみると、昨日大量に作り置きしておいたカレーがある。
貧乏学生にとってカレーやシチューは、寸胴鍋で一週間食べ続けられる代物だ。
例にもれず帝人も安く買った野菜と少しの肉で、大量のカレーを作りだしていた。
当然最低でもあと4日間は食いつなぐ計算だ。

「俺、今すぐ、何か食べないと死んじゃう、ってぐらいに、お腹すいてるんだよ、ね」

やたらとセンテンスを区切っていってくるいい年した大人。
しかも内容は子供に食事をたかっている。
(金だけは唸るほど持ってるだろうにこの人は!)
疲れて帰ってきて、自宅に不審な男が居座っているこの状況に苛立っていた帝人は、ひとつちょっとした冗談をついてみた。

「・・・・一皿600円なら」
「よし買った!!」
「えぇぇっ!?即決!?」

しかも言葉と同時に1000円札がローテーブルに叩きつけられるという流れまでついていた。
ぐっと帝人は息をのむ。

(1000円あればサラダ作って、あともう1食分作れる!っていうかお菓子食べたい・・!)

「臨也さん、僕小銭きらしててお釣り払えないかも」
「もちろんこのまま持って行ってくれていいよ!」

満面の笑みで1000円札が差し出される。
こちらもにっこりとほほ笑んで

「まいどあり」

その後、極力臨也の話を左から右へと聞き流しながら食事を終え(家から追い出すところでボールペンを持ち出す寸前までいったが)無事に自宅に一人、という状況で夜を迎えることができた。

そして午前7時にモーニングコールが嫌になるほどの美声で携帯にかかってきたわけである。

作品名:折原臨也の純情 作家名:ジグ