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折原臨也の純情

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その奇行が4日間続いたのだ。
いい加減に帝人も理由が知りたかった。

「まさか・・・・カレー好き?!」

ちなみに本日もカレーだ。昨日もおとといもカレーだ。
臨也の支払う料金によって、肉が継ぎ足され、サラダのバリエーションは毎日変わっているが、それでもメインはカレーだ。
それを文句も言わず、むしろ美味しいと言いながら男子高校生の作ったカレーを毎日食べ続ける折原臨也・・・・


「不気味すぎる・・・」


そんな4日間を過ごしている帝人にとって、臨也の機嫌が悪いなんていうのは眉唾ものだった。
青天の霹靂といってもいい。
帝人の前では、いつだって臨也は上機嫌のように見えていたからだ。

(こうなると理由が気になる)

最悪の場合、カレーを毎日食べに来てたことはスルーしてもよかった。
合鍵を返せと今更迫るほど臨也のことを知らないわけでもない(絶対に返さないことぐらいはわかってる)
何しろ料理に見合わない料金をもらっているし、臨時収入としては割がいい。

だが、帝人は考えることが割合好きだった。
これが平和島静雄あたりならば「めんどくせぇ」の一言で終わっただろうが(それ以前に一緒に夕飯などもありえないが)、帝人は原因を突き止めたいと思ってしまった。
それでなくても非日常を何より愛する少年である。好奇心は人の5倍は軽くある。

「まぁ、まずは情報収集だよね!」

なぜか今日は臨也が部屋にいなかったので(ここで一度肩すかしをくらった苛立ちも少々・・いや多分にある)これ幸いと少年は電脳の世界に情報を探しにもぐっていたのだ。
そこで見つけた、自分に見せる姿とは違って、機嫌が悪いと噂されている情報屋の情報。
これは何かある――いや、面白そうだ、とやる気を見せて、夜の帳が降り始める寸前の街に少年が繰り出した頃―――件の折原臨也は


事務所のデスク下でうずくまっていた。



++



「ちょっと何しているの。全然仕事がはかどらないんだけど」

この時間帯に事務所にいる雇い主を見るのは久しぶりだった。
けれどその助手たる女性にとって、働かない雇い主などただの中二病だ。

(そうじゃなくても病気だけど)

心の中でひとりごちながらも、書類をまとめる手は止めない。
何しろこの一週間ほど雇い主は一向に仕事に対して役立たなかったのだ。
それもこれも

「足繁くあの子供のところに通っておきながら?結局何もできずにただ毎日金を支払ってご飯食べて?よくもまぁそこまで非生産的な行動ができたものね、情報屋やめたら?」
「ちょ、ひどいよ波江さん!?俺だって、俺だって・・・」

にょきっとデスクの下から首だけ出してきた美貌は情けなく歪んでいる。
俺だって・・と呟きながらまたスルスルと下へと戻って行った。

「情けない・・・・」

波江の心からの一言である。

波江はすべて知っていた。
何しろ情報屋の助手である。
この性格の破綻した、顔しか取り柄のない(あとは悪知恵がまわることぐらいか)この男の、数週間の動向を見てきたのだ。

どこが最初だったのかは覚えていない、が、波江がこの事務所に来たころから、臨也は事あるごとに言っていた。

『帝人君って可愛いよね』
『細いけどちゃんと食事してるのかな?』
『学級委員やってるんだよえらいよねー。それで最近遅くなることもあるんだ。危ないなぁ』
『あの子にぶつかった奴がいるんだ。処分しに行ってくるから後の仕事よろしく』
『今何してるのかなー、あ、お風呂か。上がったらチャットだから先にログインしておこーっと』
『ねぇねぇ波江。帝人君は俺のことどう思ってるのかな?』

「・・・あんた本当に一回死んだほうがいいわ」
「え!?何それ波江さん!ちょっとぐらい応援してくれてもいいじゃん!」

またしてもデスク下から首が伸びてきたと思ったら、今度は憎らしげに見つめられる。
回想とともに吐き出してしまった素直な自分の心情に、同情のため息をついた(当然その同情は自分に対するものである)

「あー・・・俺って結構器用なほうだと思ってたんだけどなー・・・」
「あなた自身だけじゃなく、あなたに関わった人全員がそう思ってたわよ、このヘタレ。好きになった人に好きとも言えないなんてどこの小学生よ」
「すっ、好きとか!!お、俺が・・み、みか・・・っ、す、すきって!!」
「死ねばいい」
「だから酷いよ波江さん・・・っ!!」

初恋、なのだそうだ。
最初にそれを聞いたときは、本気で吐くかと思った。
昼に食べたサンドイッチが胃の中で震える感覚がしたものだ。気持ち悪さで。
精神的ダメージで人は死ねる。今も継続して波江はそう思っている。

だけど、うっとうしてくてたまらないと思ってる男だが、少々自分も悪かったと思っているのだ。
だからこそ役に立たない雇い主の代わりに仕事をしている。
何が悪かったのか、反省点はひとつ―――

『あなた竜ヶ峰帝人が好きなのね』

―帝人君は俺のことどう思っているのかな―その疑問に対して、波江はそう答えた。
それが失敗だったのだ。
まさか憎らしい張間並みに、盗聴器を仕掛け、つぶさにその行動を監視し、さらにぶつかっただけの人間を処分にまで向かった男が、まさか自分の気持ちも知らずに行動しているなんて夢にも思わなかったのだ。
だから普通に、一つの感情論として、折原臨也は竜ヶ峰帝人が好きなのだ、と本人に告げた。
そしてできあがったのがこの生き物である。

「お、俺が帝人君を、す、すき、とか・・そんなの告白って・・・いやいやでも最近好感触だし、モーニングコールだってちゃんと対応してくれるようになったし」
「初日は10秒も掛からず切られたわね」
「カレーだって美味しいし、お肉喜んでくれるし」
「ただ単に学生だからお腹がすいているのね。誠二もお肉好きだったわ」
「無防備に俺の前で制服着替えちゃったりして・・・っ!ガン見しちゃったよ!」
「男同士だから何も感じてないだけよ。あなたのことどうとも思ってない証拠ね」
「・・・・っ波江さん」
「何よ」
「・・・泣くよ?俺泣くよ?俺が泣いたら、ちょっととんでもなくウザいよ?」
「嫌な脅し文句ね。竜ヶ峰帝人に振られたらいいわ」
「・・・・・・っぅぅ・・・」

作品名:折原臨也の純情 作家名:ジグ