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握った掌から伝わった確かな暖かさ

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 先ほどお見送りをしたはずのオランダが、半刻もしないうちに戻ってきて、困った顔をして言った。
「出港は延期じゃ。海が荒れとる」
「では、今宵のお宿は……私の家にお泊まりになりますか?」
「お前がええんなら、世話んなる」
 ええもなにも!良いに決まっているでしょう!
 次にお会いできるのは季節が一巡りしたころか、と別れを惜しんでいただけに、なんたる行幸だろう。――いけないいけない、オランダだって早く本国に帰りたいだろうに、他人のハプニングを喜ぶだなんて。
 もうしばらくだけ、彼と居られる、と。日本はくちびるを引き結び、ともすればゆるみそうになる頬を、努めて引き締める。でも本当は童のように飛び上がりたいのだけれど。
「お部屋の支度をさせますから、しばらくお待ちになって下さい」
「すまん。あー……それと日本」
「はい?」
「嬉しいなら嬉しいと、素直に言えや」
「は、はははい?!」
「俺は別に『他人の不幸を喜ぶな!』とは怒らん」
 かかか、と日本は自分の顔が紅潮するのを感じた。すっかり、見透かされている。
「変に気ぃ回されるよりも、素直に喜んでくれるほうが、俺は嬉しいんじゃ」
「すみません……」
 大きな手のひらが、日本の丸い頭をぽすぽすとはたいていく。あわあわおたおた、照れくさいやら恥ずかしいやら。勝手知ったる足取りで、すたすたと日本の家に戻っていくオランダを追いかけながら、
「異文化交流はむずかしいですね」――ぼそり、つぶやく。
 伝え聞く諸外国、特に欧州諸国では、ふたりきりだろうと人前だろうと、はっきりと相手への好意を示すものらしい。追い追い、欧州文化は積極的に取り入れていかねばと考えている日本ではあるが、文化流入にも限度がある。
 いずれ日本国にも、抱擁程度なら定着するかもしれないが、人前で接吻したり睦言をささやいたりというのは無理だ。恥ずかしすぎて死ねる。