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いきたがりさみしんぼ

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どうしたらわたしは死ねるんだろうと、わたしに馬乗りになっている妹紅がつぶやいたので、わたしはおもわず自分のもっていた殺気というものをどこかに逃がしてしまった。さっきまで、わたしを全力で殺しにかかっていたこの女は、わたしに乗っかったと思ったら、不意にそんなことを呟いたのだ。
わたしたちは弾幕ごっこというのも、もちろんするのだけど、どちらかといえばこんなふうに、泥臭い喧嘩をすることのが多かった。そのほうが、互いに満足するのだ。肌を爪でさいて、髪をひっぱって、痛みをかんじて、かんじさせて、まだおたがいが、生きていることを確かめる。

「な、によ、いきなり」

したからみる妹紅の顔は、なんだかとても泣きそうなこどものようだったので、わたしは動悸がはげしくなる。もう何百年と似たようなことをしてきたけれど、こんな顔の妹紅はあんまりみたことがなかった。泣いている妹紅なら、なんかいか、見たことがあるけれど。彼女からももう殺気は消えていたので、わたしはそっと、上半身をおこす。もうすこし近づけば、彼女にくちづけることもできる距離で、ちょっとどきどきする。ああ、口の端が、きれてしまっている。

「あんた死にたいの?」
「死にたいんじゃない、とおもう」
「じゃあなんなのよ」
「人間として、生きたいだけだ」

わたしは月の民であるから普通の人間ではないし、だから人間のきもちとか感性とかはよくわからないのだと、おもう。だから、今急に、弱弱しい少女になってしまった妹紅のきもちが、よくわからない。どうしてそんなことを思ったのか、きっと聞いてもわたしには彼女は教えてくれないんだろう。だって、わたしたちはお互いが、きらいで、憎くて、そうして不死の身同士、こんなふうにしか付き合えない関係であって、相談ごとをしあう仲ではないのだ。やさしくしあう、仲ではないのだ。

「・・・不老不死のひとが死ぬ方法、知ってるわよ」

わたしが呟いたら、妹紅がばっと顔をあげて、わたしの顔を、期待と不安を混ぜた表情でみるので、一瞬言葉につまってしまった。


「・・・首を、きればいいのよ」
作品名:いきたがりさみしんぼ 作家名:萩子