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Snow on Soul ―特別なもの―

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 吹雪は嫌いではなかった。閉ざされたような感覚が嫌いだと下の妹は言ってはいたものの、それも含め、悪くないと思っていた。時折、何かの拍子に雲間から覗いた薄い日差しにきら、と反射するのも、空に垂れこめる雲よりも白いところも、好きだった。
 白い雪、白い視界。
 胸に抱いた、まだ小さな体温。
 ぼろぼろの身体。ぼろぼろの心。
 たくさんの誹謗中傷、そして天気すら彼女を傷をつけていった。
 美しい顔は、最後の最後まで微笑みを浮かべていた。きっと、我が子を助けられた安堵感でいっぱいだったのだろう。彼女は、いつの間にか自分の知っている女性から母へと確かに変化していたのだと、イザヤはその時初めて知ることになった。それを見ていた、二人の妹、父、そして母。
 唯一、彼女の心境を心から理解できる自分の母は、安心させるように、ただ、冷たくなっていくばかりの彼女をしっかりと抱きしめていた。ひたすら、言い聞かせるように、大丈夫、だといって。心の底から安心した彼女は、一筋だけ涙を落として、最後に言った。

―・・・ごめんね、幸せになってね。

と。あぁ、そうか。そうだったのか、と静かに理解することのできる己を、イザヤはこの時ほど呪ったことはなかった。どうして、泣きわめいて、死ぬな、と言えないのか。どうして、君はこんなにも愛しい、待ちわびた存在だけを残して、去ってしまうのか。と言えないのか。どうして、これから二人で幸せになるはずじゃなかったのか、といえないのか。腕に抱いた体温は赤ん坊らしく高く、何が起きているかを理解する力は全くない。
 しかしけれども、一瞬遅れて火がついたように泣きだした頬に、一粒だけ涙が落ちていた。

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