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君に出会えた奇跡2

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今日もバイトが入っている。アントーニョは昼頃に起きもそもそとベッドからはい出て背伸びをする。
「あーおはようロヴィ? っていないやんけ。」
ここはロヴィーノが一人暮らししていたマンション、俺なんかの給料では敷金礼金すら払えない代物のここはお爺様からもらったものらしい。付き合いだしてしばらくして、ロヴィーノと同棲を始めた。正確にはロヴィーノのとこに押しかけた。
それからは、一緒にご飯作ったり、夜は勿論一緒のベッドで寝て、だけど朝は違った。人気モデルのロヴィーノは撮影があると自分を起こさず一人で出て行ってしまう。夜勤明けだったり、夜遅くまで働いて帰ってきてベッドにもぐりこんでしまうアントーニョを気遣ってのことだろうが、行ってらっしゃいが言えないのは中々寂しい。
ダイニングテーブルには美味しそうなサンドイッチがラップをかけて置いてあり、それとメモが一つ。
「今日は17時ぐらいに帰ります、か。なら今日は俺が夕飯作るかな。」
夕飯の準備してから夜勤に行けばいい。きっと撮影で疲れて帰ってくる彼のために好きなパエリア作っておいておけばいい。一緒にいれない分の愛情に手間をかけることにけして手を抜かない。
「てか、俺もちゃんと職探して、ロヴィの隣に胸はって立てるようにせな。」


丁度日付がかわった頃に、同棲中の恋人からメールがあった。
『撮影がのびた。帰るのは明け方になるから寝ていていい。』
アントーニョはそのメールを受け取ると、台所にコーヒーを入れにいった。徹夜は夜勤のバイトで慣れている。最愛の恋人が仕事から帰ってくるのを待っているのは苦にならない。
自分がバイトをしているコンビニに通っていたロヴィーノに告白して、その恋が実って、紆余曲折をへてロヴィーノが住んでいるマンションで同棲を始めた。自分は相変わらずバイト生活で、アントーニョ一人では敷金すら払えないこのマンションの家賃はロヴィーノが払っている。生活費は折半しているが、それでもロヴィーノが負担している率は高い。
「俺も仕事探さなあかんなぁ。」
コーヒーを飲みながら求人雑誌をめくる。そばには不採用を知らせる手紙が入った封筒もおいてある。少しずつでも今のロヴィーノに頼る生活を変えようと努力はしているが、今は不景気、どこも採用には厳しい。
「そや、ロヴィーノが帰ってきた時になんか食べれるもの作っておくか。」
恋人は、某有名ブランドのモデルできっと撮影で帰ってきたら疲れ果てているだろう。栄養たっぷりで簡単に食べられる物を作ろうとアントーニョは台所に立つ。
以前から節約のために自炊をしていたが今はロヴィーノの喜ぶ顔が見たくて料理を作るようになった。
「トマトと野菜たっぷりのミネストローネ、パスタも入れるか。」
材料を適当な大きさに切り、鍋にいれる。うま味を出すためにベーコンを入れ調理していく。
気づけばメールをもらってから2時間ほど経っている。多分今ごろも恋人は撮影をしているのだろう。疲れているのを見せないで、意地っ張りな子だから、疲れたなんて絶対に言わない。そんな子だから、ここに帰ってきたら温かい料理で迎えてやりたい。アントーニョは自然と微笑みを浮かべながら鍋をかきまぜていた。

ロヴィーノは白ずむ空を見ながら住んでいるマンションのエントランスをくぐった。
機材のトラブルで撮影がのびてしまい。こんな時間になった。きっと同棲している恋人は寝ているだろう。今日は早番だと言っていたから、きっとロヴィーノが一眠りすることに出かけていくだろうからすれ違いなる。
それに寂しさを感じながらロヴィーノは部屋のドアを開けた。
「あっ、ロヴィお帰り。お疲れさん。」
太陽みたいな笑顔で、アントーニョはロヴィーノを出迎えた。ロヴィーノは呆然とする。寝ていると思っていた。寝てていいと待ってなくていいと言っていたのに起きていて待っていてくれた。
「た、ただいま。寝てて良かったんだぞ。」
ロヴィーノは荷物をおろし上着を脱いだ。
「早く目が覚めただけやで。疲れているやろ。お風呂わいてるで、それと簡単なものだけど料理も作ってあるで。」
「えっ。」
アントーニョはそう言って台所にある鍋を指さす。
「・・・・・、風呂入ってくる。」
一瞬ロヴィーノはこみ上げてくるものがあったが、それを悟られない様に風呂場に向かう。
風呂も丁度良い温度にわかしてあり、ロヴィーノは疲れた体をバスタブでのばす。
風呂からあがると、アントーニョは台所に立っていた。
「親分特製のミネストローネやで、あとロヴィが美味しいって言っていた店のパンもあるで。」
甲斐甲斐しく用意してくれる温かい料理に、ロヴィーノは言葉をつまらせる。そのとき、テーブルの上に投げ出されていた封筒に目がいく。
「これ、結果でたのか?」
その封筒はアントーニョが先日面接を受けてきた会社のものだった。アントーニョは少々気まずそうに言う。
「また駄目だったんや。ホンマロヴィにばっか負担かけててごめんな。次は、もっと頑張るから、もう少し待っててな。」
元々ここの家賃もロヴィーノ一人の稼ぎで払えている。生活費もアントーニョが負担に思うことはないのに、アントーニョはいつもそれを負い目に感じている。確かに未だ正規の職につけていないのは苦しい状況なのだろう。だけどロヴィーノは思う。
撮影で嫌なことがあったり、すごく疲れている時でも、アントーニョは温かい料理と太陽みたいな優しい笑顔で迎えてくれる。一人だったこの部屋をあったかくして待っていてくれる。
「別に、焦んなくていい。俺は、気にしていない。」
話を変えるようにロヴィーノはアントーニョが用意してくれた食事に口をつける。温かくて優しい味。
「でも、俺ロヴィに頼ってばっかやん。俺もロヴィを支えたいねん。」
楽させてあげたい。そう言ってくれるが、今の状況がどれだけロヴィーノの心を救っているのかアントーニョは理解していなかった。両親は幼い頃に死別していて、双子の弟と祖父によって育てられた。しかし祖父は二人の養うために必死に働いていたので、家では通いの家政婦と弟しかいなかった。
泣き虫な弟がいるから、ロヴィーノは温かさを与える側だった。無条件に温かさを与えてくれる相手に、ロヴィーノはアントーニョと出会うまで出会えなかった。祖父は自分たちを守ってくれたけど、自分にだけということはなかった。いつも弟と半分、しかも弟にだいぶ譲った半分だった。
「お前は、こうして、飯作って待っててくれるだけでいいんだ。」
ロヴィーノは目に涙をためながらそう言った。
「ロヴィ、どないしたん? 泣いてる。」
アントーニョはロヴィーノの変化に気づき、そっとロヴィーノの頬を両手で包んだ。
「なんか仕事場で嫌なことあったん? 親分話聞くで?」
「違っ・・・・。お前が、ここにいて、俺のこと待っててくれるのが、嬉しいだけだコノヤロー。」
冷たい一人の部屋だったのに、今は帰ればアントーニョがいるという安心感に満ち足りている。待っている人がいて、自分のことを大切にしてくれている。
「当たり前やん。ロヴィが仕事から帰ってきたときは、いつでも俺が迎えるで、だって大切な子に寒い部屋になんて帰ってきて欲しくないもん。」
零れた涙を拭われて、目元にキスがふってくる。
作品名:君に出会えた奇跡2 作家名:由々子