ロリポップ・キャンディ
人を好きになるって、きっと花礫くんが思っているより、ずっと素敵なことだから。だから足りない分は俺が『好き』をあげるから、お友達の分だけ俺を好きになって?」
莫迦の瞳は真剣だ。真剣な分タチが悪い。
その真剣すぎる瞳の分だけ、どうやって彼を諫めようかと考えて、俺は考えるのを止めた。莫迦に真剣に付き合うほどの愚行はない。
「そうかよ、じゃあ好きにしな」
やおら本を手に立ち上がると、『オトモダチ』とやらに昇格したらしい男を置いて、さっさと立ち去りかけると、後ろから置いていかれた形になった與儀が「え、え?」と狼狽えた声を上げた。それが少しだけ可笑しくて、俺はもう一言だけ付け加えることにする。
「あのな覚えとけよ。0には何掛けたっていつまでも0のままだからな」
その言葉の意味を咄嗟に図りかねて、きょとんとするソイツを放って、今度こそ俺はその場を後にした。
作品名:ロリポップ・キャンディ 作家名:宙(評価の為、晒し中)