ロリポップ・キャンディ
そうだろうか。それは彼の言う仲間とやらなら、当然付随する感情なのではないだろうか。
別に俺は彼を守ってやりたいとも、傍にいたいとも思わないけれども、守られたりしないで対等でいたいと思うのだけれども、それでも仲間だと言うなら、それなりに心配もするし気遣いもする。けれどそれが恋愛感情から来るものではないことは誰よりも俺が承知していて、だから素直に彼のそれが恋愛の『好き』だとは頷き難い。
「ねぇ花礫くん」
コトンと首を傾げて、與儀が見上げてくる。
「花礫くんは俺のことが嫌い?
こんなことをいう俺は気持ち悪いとか、鬱陶しいって思う?」
その質問は卑怯だ。
俺は多少なりとも、彼が自分のテリトリーに踏み込んでいることを認めざるを得ないし、寧ろこんな俺を好きだと言う彼を哀れだとさえ思う。
けれども、そこに彼の言う悪感情は含まれてはいない。
何故かは判らないが、俺はこんな莫迦をいう與儀を嫌いにはなれないし、気持ち悪いとも思わない。
それがどういう意味を持つのか俺には判らなかった。
「別に。ンな事は言わねぇけど」
だから言葉を濁す。逃げたい訳ではないけれども、感情よりも先に理性が逃げを打つ。
「言わないけど、何?」
「正直俺はお前の言ってることの意味が半分も判らねぇ。好きだのなんだのって、女相手でも判らないってのに、その相手がお前だったら猶更だ」
どうしようも、自分でも整理しきれない感情を、それでも何とか言葉にした。そして澄んだ紫電から目を逸らすように、くしゃりと前髪を掻き混ぜると、いつも温かい與儀の手が伸びてきて、俺の手の上に重ねられる。
「じゃあオトモダチからってことで、花礫くん」
そのまま右手を捕られて、握り締められたかと思うと目の前の莫迦はそう言った。
「ハァ?!」
お前は今まで俺の話の何を聞いていた、と。思わず口から間抜けな声が漏れる。そんな三文芝居の常套句が聞きたくて、コイツの阿呆な話に付き合った訳ではない。
もう二度と與儀がこんなことを言い出さないように、そう思って釘を刺したつもりだったが、どうやらヨーグルトに釘は立たないらしい。
「判らないならさ、知らないなら、知っていけば良いんだよ。
作品名:ロリポップ・キャンディ 作家名:宙(評価の為、晒し中)