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非・日常風景

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いつもの清々しい朝ではなかった。
意識が浮上したとたんにガンガンと痛みが脳内に響いたからだ。

時計を確認すれば、6時を少し過ぎていた。
寝坊してしまったと体をおこそうとすると、いっそう痛みが強くなる。
構わずベッドから降りたものの、あまりの痛みに眩暈までしてきた。
(まるで脳内でシンバルを思いっきり叩かれている気分だ。)
何十年ぶりかの二日酔いに、ドイツは深い溜息をついた。

おそらく、いや間違いなく昨夜の兄プロイセンとの飲み比べが原因だろう。
2人とも酒豪と聞いていますがどちらがお強いのですか?と従弟であるオーストリアがふいに零したのが切っ掛けだったように思う。
その一言に兄や親戚連中のテンションが急激にあがり、親睦会が大飲み大会へと打って変わってしまった。
いったいどれだけ飲んだ、いや飲まされたのかと記憶を辿ろうとしてやめた。
よりいっそう頭痛が酷くなったからだ。
「馬鹿兄貴があんなに張り切るからだ、くそっ。」


二日酔い独特の痛みに眉をしかめながら、とりあえず水分補給をしなければとキッチンを目指す。
階下へと続く階段がこんなにも長いと感じたことはない。
階段をおりる振動で波打つように痛みが響くのだからたまらない。
やっとの思いで1階へ辿りつき、とりあえず深呼吸をした。
リビングへと続く廊下の途中、兄の部屋の前を通り過ぎるときにはドアを蹴ってやった。
「くっ」
とたんにガツンとした痛みがドイツを襲い、思わずその場にしゃがみこむ。
こうなることは分かっていたが、蹴らずにはいられなかったので後悔はしていない。
それにしてもドアの中から聞こえてくるイビキが腹立たしい。

(だがまあいい。)
(あと数時間もすれば兄さんにも同じ地獄が待っているのだ。)
(今は安らかに眠るといいさ、俺はその時のためにこいつを静めておかなければ。)


ふと香ばしい匂いが鼻をかすめた。
誰かがキッチンでパンを焼いているらしい。
「オーストリアか?」
しかし、彼が何か料理を作ると爆発音がついてくるのだ。それがない。静かである。
他の親戚連中に飲んだ翌朝に朝食を振舞おうという気の効いたものはいない筈だ。
イタリアなどはパスタはつくってもパンは焼かない。その前にこんな早朝に起きられる訳がない。
では一体誰がと少し足早にリビングへと入り、キッチンをのぞけばそこに意外な人がいた。
淡い小麦色の髪にライトブルーのリボン。
オーブンを覗き込んでいるため顔は見えないが決定的だった。
「・・・リヒテン、シュタインか?」
しかしいるはずがない。
大飲み大会の最中、彼女(とその兄)の姿が見えなくなったのでてっきり帰ったのだと思っていた。
ズキズキと勢いよく血流が血管内をめぐっていくのがわかる。
ひどい宴のあとの恒例の点呼にも、彼女(とその兄)の名は呼ばれなかった。
なのになぜ、彼女はここにいるんだ。
どうして俺の目の前に、

「あら、おはようございますドイツさん。」

お早いお目覚めですね。
少し楽しそうに言いながら振り返ったその手には、焼きたてのプレッシェルが綺麗に並んでいた。


作品名:非・日常風景 作家名:飛ぶ蛙