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非・日常風景

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コトリ。カタカタカタン。

キッチンからリズミカルな音が聞こえてくる。
リヒテンシュタインが朝食の準備をしてくれているのだ。
手伝うと申し出たが、「もうすぐ出来ますから」と立ち上がりかけた椅子に押し戻されてしまった。
彼女はカウンターの向こう側で、くるくると楽しそうに動いている。
ドイツはテーブルに左肘をつきながら、その様子を眺めた。
(彼女が朝食をつくり、俺はコーヒーを飲みながらそれを眺める。)
密かに胸に思い描いてきた非日常の風景。
それが今、すべて体現(二人の関係はどうであれ、だ)されていることが信じられない。
先ほどの行動で兄が起きなくて良かったとドイツは思った。

プレッシェルに小さめの丸いパンが食卓に並び、それにハムやチーズ、ゆで卵やトマトにジャムが添えられていた。飲み物は淹れたてのコーヒー。
二日酔いで食欲はあまり無いと思っていたが、いざ目の前に並ぶと自然と手が伸びた。
メニューは普段食べているものとそう違わないのだが、自分が作るものより数倍は美味しい。
ひょいひょいと夢中になって食べるドイツ。
それをリヒテンシュタインは嬉しそうに眺めていた。
その視線がなんともこそばゆく、ドイツはなおさら食べることに集中したのだった。

そうして食事も終わり一息ついたところで、ドイツは気になっていたことを訊ねた。
「俺は、貴女とスイスはてっきり昨日の内に帰宅したものと思っていた。途中で姿が見えなくなったし、点呼の時にも名を呼ばれなかったから尚更だ。」
リヒテンシュタインは、きょとんとした顔でドイツを見ている。
それに多少の違和感を覚えたが話を続けた。

「だから貴女の姿を見た時、とても驚いたんだ。どうしてここにいるのかと。」

最後まで言い終わらないうちに、なぜかリヒテンシュタインは俯いてしまった。
失言だったかとドイツはおおいに焦った。
「あ、いや、貴女がいない方がいいとかそういうのではなく、むしろ嬉しいくらいだが、」
「くすくすくす」
しかし、彼女の小さな笑い声が聞こえてきた。
どうして笑っているのだろう。
その理由が分からないドイツが、今度はきょとんとしてしまった。
しばらく様子をみていたが、リヒテンシュタインの笑いは治まらない。
「・・・笑ってないで教えて欲しいのだが。」
なんだか恥ずかしいやら、ムカムカするやらでドイツの声は自然と低くなる。
「こほん。失礼いたしました。」
リヒテンシュタインは一つ咳払いをすると、顔をあげてすっと背筋をのばした。
それに倣うようにして、ドイツの背筋を伸ばした。

「憶えていらっしゃらないのですか?」
「なにをだ?」
「私くし、ドイツさんからお願いされてここにいますのよ?」
「!?」

衝撃の一言だった。
そして、かっと顔に体中の熱が集まったのが分かった。
(まさかそんなっ嘘だっ!)
ドクドクと脈打つこめかみをさすりながらも、信じられない思いで口を開く。

「・・・俺が、貴女に?」
「はい。」
「朝食を作って欲しいと?」
「お願いされました。」

しっかりと頷かれてドイツは机に突っ伏した。
恥ずかしい。恥ずかしいことこの上ない。
ドイツは全く憶えていないが、リヒテンシュタインがこんなことで嘘を言うわけがない。
従って、これは事実なのだ。
「だから、笑ったのか?」
それはそうだろう。
お願いされた当の本人から、どうしてここにいるんだと問われれば笑いたくもなる。

作品名:非・日常風景 作家名:飛ぶ蛙