二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

非・日常風景

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 


リヒテンシュタインによると。
翌日スイスに急な会議の予定が入ったので、日が変わらないうちに一緒に自国へ帰ったのだそうだ。今回の点呼係りであるスウェーデンに事情は話していたので、昨夜呼ばれなかったのは当たり前なのだ。
リヒテンシュタインは挨拶をして帰ろうとしたが、盛り上がりすぎてほぼ半狂乱と化していた為、スイスに断固反対されたそうである。
スイスと別れ自宅に到着して、さあ眠ろうという頃に、リヒテンシュタインの電話が鳴った。
着信は、プロイセンからであった。

「俺ではなく、プロイセンだった?」
兄の名前がでてきたことで、ドイツはがばりと体を起した。
なにがどうなってリヒテンシュタインに電話したのか、どうしてそれを憶えていないのか。
プロイセンの名がでたことで、経緯はともかく、すべて繋がった気がしたのだ。
やはり先ほど叩き起しておくべきだった。
「そうか、なにもかも馬鹿兄貴のせいかっ!」
「まあ、お兄様のことをそのように仰ってはいけません!」
「う、すまない」
年長者には敬意を。
そうリヒテンシュタインに強く窘められ、ドイツはうな垂れた。
こういうとき、彼女が年上なのだと実感させられる。

さて、滅多に電話をしてこない人物からの着信に、リヒテンシュタインは驚いた。
不思議に思いつつも通話ボタンを押した。
聞こえてきたプロイセンの声はかなり出来上がっているようだった。少し話をしているうちに、なにやらドイツの切羽詰った声も聞こえてきて、電話の向こう側で兄弟喧嘩を始めたのが分かった。

『やめてくれ兄さん!』
『いいから任せておけって!』
『任せられるかっ!』
『ああん?このオレ様が頼りないってか!?』
『余計な事をするなと言っている!』
『だったら、うだうだ女みてーに悩むなッ!このヘタレがっ!』
『なんだと!俺はヘタレなどではない!それに今のは差別発言だぞ!』
『細けえことはいいんだよ!ほらよ。』
『なんだ?』
『見せてもらおうか、ゲルマン魂をよ。』

なにがどうなっているのかリヒテンシュタインにはさっぱり分からない。
すると、すぅっと深呼吸をする音が聞こえた。

『・・・ドイツだ。』
『はい。』
『夜分にすまない。それに聞き苦しかっただろう。』
『いいえ。相変わらず仲が良くて羨ましいですわ。』
『そうでもないが。その、(さっさと言えー!)うるさい!』
『あの、ご用件はなんなんでしょうか?』
『ああ。手短に言う。   俺のために朝食を作ってくれないか?』
『それは、構いませんけれど。』
『その、明日だけ『やったじゃねえーかヴェストッ!』うわっ兄さんやめっ!』
『(ゴツッ)』
『!?ドイツさん、今すごい音がしましたけれど!』
『おーリヒトか?』
『小父様!ドイツさんは大丈夫ですの?』
『だーい丈夫だって。すっかり寝ちまったよ。それより朝飯、楽しみにしてるからよ。』
『え、ええ。分かりました。おやすみなさいまし。』

「ということです。」
「・・・すまなかった。」

ドイツはすっかり落ち込んでいた。
深夜遅くに電話をした挙句、朝食をつくれとは。
非常識にもほどがある。
それを知らずに喜んでいた自分が死ぬほど恥ずかしい。

しかし、とドイツは思った。
やはり諸悪の根源は兄プロイセンではないか。
酔っ払い兄→リヒテンシュタインに電話→嗾けられてドイツ告白(しかし上手く伝わらず)→兄の悪ふざけ→転倒→二日酔い&記憶障害→現状に至る。
ふつふつと湧きあがる怒り。
いまだ惰眠を貪る兄には後で必ず報復の鉄槌を打ち込んでやる。


「コーヒーのお代わりはいかがですか?」

救いなのは、リヒテンシュタインが今こうして目の前にいてくれることだ。
スイス以外と食事をとるのは久し振りだったらしい。
とても新鮮だと楽しいと笑ってくれている。

彼女の笑顔と、思い描いた非日常の風景。

とりあえず今は。
この幸福ともいえるひと時を満喫することにしよう。
昨夜の自分の勇気にも敬意を表して。

「いただこう。」


作品名:非・日常風景 作家名:飛ぶ蛙