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焼け野の雉子 夜の鶴

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「銀さん。桂さん来てました?」
「ああ?」
 仕事から戻ってくるなり、新八が言ったことに銀時は声を荒げる。あいつなんぞ、思い出したくも無い。
「いえ、玄関にこれがあったから」
 ひょいと新八が取り出した包みに、そんなもんあったっけ?と思い返すが草履に気をとられていて靴箱の上まで見てなかったことを思い出しただけだった。
「なにそれ」
「羊羹です。だから桂さんかなぁって」
「あー来てたけど」
「じゃあ桂さんですね。後でお礼言っておいてくださいね」
「いらねーよ。あいつには散々迷惑かけられてんだ。そのくらいこっちが貰って当然なんだよ」
「そうですか?」
「そうなの」
 桂の話は聞きたくないので銀時はそこで話題を切るとテレビをつけた。夕方のワイドショーはチョコレート特集を映し出しているのに、ん、と銀時は振り返り日めくりカレンダーを見た。しかしそれは適当に破られている所為か1月の半ばだった。
「神楽―今日って何日だ」
「13日アル。金曜日ネ!」
 チェーンソーを持つ真似をして神楽が答える。はいはい、と新八が笑いながらテーブルに切り分けられた羊羹を乗せた皿を置いた。
「あーそう」
 皿から羊羹を一つ摘むと口に運ぶ。控えめな甘さがチョコとは違い、団子を思い出した。
「お前ら今日は終わりだ」
「なんですか突然」
 神楽の隣に座って羊羹を口に含みながら新八が銀時を睨む。神楽はきゃっほうと声を上げて羊羹の入っていた包みを広げていた。
「酢昆布アル!」
「あーはい良かったねーで、下で晩御飯食って来い」
「銀ちゃん今日は帰らないアルか?」
「え?出かけるんですか?」
「団子食えてねえんだよ」
 よっこいしょと声に出して立ち上がる。老けたなぁと思わずにはいられない。
「団子ですか」
「新八ぃー詮索してやるなヨ。団子と言う名のスイーツアル」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。団子は団子だっつの。じゃあな。戸締りまかせたぞ」
「はい」
 夕闇のかぶき町に消えていく背中に返事をして、新八は空になった皿を持って立ち上がった。神楽はソファにふんぞり返ると酢昆布を咥えてにししと笑う。
「何?どうしたの」
「銀ちゃんヅラんとこ行くネ」
 酢昆布を持たない手で神楽が部屋の隅を指差す。従ってそちらを見れば、小さなゴミ箱の中に茶色い袋が納まっているのが見えた。
「んまい棒チョコ味ネ。ヅラにもらったに違いないアル」
「ああ、それで」
 ワイドショーは既に別のコーナーに切り替わっているが、先程のものは間違いなくバレンタインのための特集だった。
「神楽ちゃん、あんな大人になっちゃ駄目だよ」
 新八の忠告に神楽は尻を掻きながら笑って答える。
「勿論ネ」
作品名:焼け野の雉子 夜の鶴 作家名:なつ