【土沖】ねずみ沖田がうし土方のおめかしに精を出す話
大晦日の晩、土方の夢の中の話である。初詣警備に備えて仮眠を取っていたら、そのまどろみの中に沖田が現れてちゅうちゅう言った。
「ひじかたさん、ひじかたさん。俺ねえ、あんたに渡さなきゃいけないものがあるんでさァ」
ちゅうちゅうというのは、ねずみの鳴き声のイメージである。土方は首を傾げ、はてどうしてそんな生き物の……と思ってよくよく見れば、沖田のまるい頭の両横にはふたつ灰色の丸い耳がついていた。
「あっ、なになに、なんですかィ。いたいってば」
「いたくねーって。ちょっと触らせてみろ」
しかし耳は無理に引っ張っていいほど強くなく、どうにも紙より薄っぺらい。ふちをなぞるとくすぐったいのか器用にぺったり寝かせるのだが、あんまりしつこくしたらいやいやと頭を振って振り払われてしまった。乱暴にやるものだから、髪の毛がくちゃくちゃになってまるで大晦日にふさわしくない。挙句くちびるを尖らせ、上目を遣って恨みがましそうな顔をする。(本当は、大して気になどとめていないくせに)
「あんたは強引だ。ちっとも話を聞きやしない」
「お前に言われたら俺もおしまいだよ。そんで、お前はそんなけったいな格好で人の夢にまでやってきて、何の用だ」
「干支をね、渡しに来たんでさァ。俺がねずみ。あんたが牛。ねずみの次は、牛」
土方は片眉を上げ、総悟お前、干支なんてちゃんと順当に言えたのかよと意外に思った。しかしそんなことを指摘するまでの間に沖田はてきぱきと紙袋の中から牛の角や耳、白黒模様の服をたくさんたくさん取り出して土方に当て、この角よりこっちの方が上等に見える、鈴の紐はこの色のほうが愛嬌があっていいなどとやっている。
「大体、なんで俺が丑年なんだ」
「さあ。牡牛座だから?」
「じゃあなんでお前がねずみだ。明らかに適任はあれだろ、宇宙外生命体の……」
「だって俺に似合ってかわいいから。見て、お腹がピンク色にふわふわしてるんですぜ」
言うなり土方の手を取って、確かに丸く桃色の毛並みになった腹の所へぴったり当てられる。「ね?」と子供みたいに首を傾ける。
言われた通り、滑らかで柔らかい毛並みは上等の絨毯のようだった。土方は手を動かして撫ぜていいのかを少し悩んで結局やめる。自分がそれをされたら、多分死ぬほどくすぐったくて嫌だろうなと思ったからだ。
「ひじかたさん、ひじかたさん。俺ねえ、あんたに渡さなきゃいけないものがあるんでさァ」
ちゅうちゅうというのは、ねずみの鳴き声のイメージである。土方は首を傾げ、はてどうしてそんな生き物の……と思ってよくよく見れば、沖田のまるい頭の両横にはふたつ灰色の丸い耳がついていた。
「あっ、なになに、なんですかィ。いたいってば」
「いたくねーって。ちょっと触らせてみろ」
しかし耳は無理に引っ張っていいほど強くなく、どうにも紙より薄っぺらい。ふちをなぞるとくすぐったいのか器用にぺったり寝かせるのだが、あんまりしつこくしたらいやいやと頭を振って振り払われてしまった。乱暴にやるものだから、髪の毛がくちゃくちゃになってまるで大晦日にふさわしくない。挙句くちびるを尖らせ、上目を遣って恨みがましそうな顔をする。(本当は、大して気になどとめていないくせに)
「あんたは強引だ。ちっとも話を聞きやしない」
「お前に言われたら俺もおしまいだよ。そんで、お前はそんなけったいな格好で人の夢にまでやってきて、何の用だ」
「干支をね、渡しに来たんでさァ。俺がねずみ。あんたが牛。ねずみの次は、牛」
土方は片眉を上げ、総悟お前、干支なんてちゃんと順当に言えたのかよと意外に思った。しかしそんなことを指摘するまでの間に沖田はてきぱきと紙袋の中から牛の角や耳、白黒模様の服をたくさんたくさん取り出して土方に当て、この角よりこっちの方が上等に見える、鈴の紐はこの色のほうが愛嬌があっていいなどとやっている。
「大体、なんで俺が丑年なんだ」
「さあ。牡牛座だから?」
「じゃあなんでお前がねずみだ。明らかに適任はあれだろ、宇宙外生命体の……」
「だって俺に似合ってかわいいから。見て、お腹がピンク色にふわふわしてるんですぜ」
言うなり土方の手を取って、確かに丸く桃色の毛並みになった腹の所へぴったり当てられる。「ね?」と子供みたいに首を傾ける。
言われた通り、滑らかで柔らかい毛並みは上等の絨毯のようだった。土方は手を動かして撫ぜていいのかを少し悩んで結局やめる。自分がそれをされたら、多分死ぬほどくすぐったくて嫌だろうなと思ったからだ。
作品名:【土沖】ねずみ沖田がうし土方のおめかしに精を出す話 作家名:てまり@pixiv