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キミの旋律

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キミの旋律



・マスターとVOCALOIDの組み合わせで戦う、トーナメント方式。

・バトルフィールド内で、VOCALOIDを具現化させて戦う。

・制限時間は、5分。制限時間内に決着がつかない場合、判定となる。

・攻撃できるのは、VOCALOIDのみ。歌による精神攻撃か、素手による直接攻撃。武器の使用は不可。

・マスターへの直接攻撃、マスターからの攻撃は反則行為とみなし、15秒間待機のペナルティが課せられる。

・バトルフィールド内での、マスターとVOCALOIDは、シンクロ率50%以上であること。

・マスターは、VOCALOIDを何体使用してもよいが、一体でもシンクロ率が50%を下回った場合は、失格となる。

・マスターは、VOCALOIDの肌に直接触れることで、シンクロ率を上げることができる。

勝利条件
・相手VOCALOID、もしくはマスターを行動不能にする。

・相手マスターから、「参った」の宣言がある。

・相手マスターが、バトルフィールド内から出る。

・相手VOCALOIDを乗っ取る。

・判定による勝利。

「VOCALOID・BATTLE公式ルールブックより抜粋」



『本日、第三組目の第一戦は、マスター・エチゴの「MEIKO」対マスター・シマノの「KAITO」!!』

実況の声と共に、歓声が上がる。
実体化した俺は、マスターのほうをちらっと見た。

・・・無理かも。

思わず、溜息が洩れる。

マスターは、すでに弱気な顔で、こっちを見上げている。
「マスター・・・」
「あ、だ、大丈夫。うん、ばんがろう」
おどおどとした声に、俺は、もう一度溜め息をついた。
「そんなに緊張しないでください。落ちついて戦えば、大丈夫ですから」
「で、でも、向こう、MEIKOだよ?しかも、前回準優勝だし・・・」

まあ、そうなんですけど。

「大丈夫ですよ。シンクロ率では、負けてませんから」

シンクロ率の高さは、マスターとの意思疎通を円滑にする。
一々指示を受けなくても、VOCALOIDが判断して動けるのだから、反応が早くなり、戦いにおいては有利になる。

・・・のだが。

「・・・・・・・」

マスターの目が、「それしか勝ってないよ」と言っている。

いや、そうなんですけどね。
でも、もうちょっと、こう、信頼して欲しいというか・・・。

俺は、三度目の溜め息をついた。

・・・駄目かも・・・。


『両者、スタート位置についてください!!』

その声に、俺は、MEIKOと向かい合う。

いや、まあ、確かに、かなりの強敵なんですけど。
俺だって、それなりに調整してきたのだから、そう簡単には負けはしない。

そして、合図の音が鳴り響いた。

間髪入れず、MEIKOが高らかに歌い出す。

くぁっ!!いきなり!?

出力全開の歌声に、頭の中をかきまわされるような気がしたが、俺は、負けじと歌を

「参った!!!」

うた・・・え?

「ま・・・マスター?」
「ごめん・・・やっぱ、怖い」

『おーっと!!マスター・シマノから、「参った」のコールです!!この勝負、マスター・エチゴの勝利!!』


あの・・・俺、歌ってないんですけど・・・。





「それで、歌う間もなく、敗退しちゃったんだー!!」
俺の話を聞いて、メイコが腹を抱えて笑う。

くっ、ムカつく。
対戦相手がMEIKOだっただけに、余計腹立つ。

「しょーがないだろ。マスターが、開始早々、「参った」しちゃったんだから」
「まあねえ。カイトのせいじゃないんだろうけど。でも、どっちにしろ勝てなかったでしょ?うん?」
にやにやしながら、メイコが聞いてきた。

くっ・・・。

「まあね・・・さすが、前大会の準優勝者だけあるよ。シンクロ率も高いし、調整もバランスがいい。今回も、かなり上まで行くんじゃないか?」
メイコは、ほーっと声を上げて、
「評論家みたいねー。さすが、待機組常連は違うわ」

待機組言うな!!気にしてんだから!!

「・・・そういうメイコは、どこまで行ったんだよー?」

大会はまだ終わっていないのに、パソコン内にいるってことは、何処かで負けたってことだ。

「あたしは、三回戦敗退。惜しいところで、時間切れになっちゃってー」
「相手は?MEIKO?ミク?」
「リンレン。鏡音使いは、大抵二体だから、キツイわー」
「ああ、確かに」

メイコは、パワー特化で調整されてるから、小回りの利くリン・レンは、苦手な相手だ。

しかも、メイコは、マスターのお姉さんと出たはず。

「また、シンクロ無視して、前に出たんだろ?」
マスターのお姉さんは、VOCALOIDとのシンクロが苦手なので、すぐ失格となることが多い。
メイコで50ちょい、俺にいたっては、20にも届かないほどだ。
「しょーがないじゃない。そういう設定なんだから。でも、今回は、失格じゃないわよ。時間切れで判定負け」

・・・どうせ、前に出ては、シンクロ率が下がって戻る、を繰り返してたんだろ。

VOCALOIDの歌による攻撃は、マスターとのシンクロ率を下げる。
50を下回れば、その時点で失格なのだから、メイコは、殆ど前に出れないはず・・・なんだけど。

「無駄な動作が多いから、判定で負けるんだよ」
「仕方ないじゃない。使って貰えないあんたよりは、マシよ」

くうううううううっ!!

「・・・マスターが、本気になってくれればね」
メイコが、ぼそっと言った。

そうだ。
本来のマスターは、弟の方。

マスターのシンクロ率の高さは、特殊技能と言っていい。
何故なら、


「メイコ、カイト、出てきていいよー」
マスターの声が聞こえた。
と、同時に、ふわりと体が持ち上がる感覚。

気がつけば、マスターの自室。
目の前には、マスター。隣には、実体化したメイコ。

「二人とも、お疲れ様。メイコは、特に疲れたでしょう?」
「大丈夫ですよー、あのくらい」
メイコは、上機嫌で、マスターのベッドに腰かけた。

・・・俺は、疲れるほどのことは、してませんけどね。

言っても困らせるだけなので、黙って、床に転がっているクッションの上に座る。

これが、マスターの特殊技能。
バトルフィールド以外でも、俺らを実体化させることができる。


大体、大会優勝者でも、シンクロ率が70ぎりぎりなのに、マスターは、気を抜くと、90を超えてしまう。
そんな数値を出したら、大騒ぎになってしまうので、マスターは意識して、60まで下げている。

意識して下げてる人なんて、他にいないんじゃないだろうか。


初めて実体化させられた時は、こっちが度肝を抜かれた。
何せ、気がついたら、目の間にマスターと、驚いた顔のメイコがいたのだから。


ていうか、ありえないよね。
VOCALOIDを実体化させるって、どんな妄想なのかと。
俺らって、ただのソフトのはずなんだけど。


確かに、バトルフィールド内では、VOCALOIDは意志を持っているように見えるが、それはマスターの意識を反映させているにすぎない。
パソコンに戻れば、自我などない、ただのソフトウェアに戻る。


・・・はずなんだよ。本来は。

作品名:キミの旋律 作家名:シャオ