野ばら
国家の存在の消滅が、自分たちの死亡条件だと兄に教わった。明確な消滅の条件は誰にもわからない。歴史の中で、消えていった国と表舞台から退いただけで生き続ける国の差は明確なものではないのだ。
――負けたのは俺だ。でも、俺は生きている。
フランスを見れば解る。この戦争は、勝ち負けではない。勝者も同様に深手を負った。
恨んでいるのだろうか、隠しきれないほど傷ついた自身を。そうした相手のことを。
あの男はプライドの高い男だった。国であるからにはそれなりの矜持は持ち合わせているが、彼は根本的な、生きていくための矜持が飛びぬけて高いのだ。大国故、長く生きてきた故。自分のように継ぎ足し栄えてきた国ではない彼は、その国のすべてをひとりで背負う。
「ほんとうに、終わったのか」