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ラブアンドピースについての命題

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そして冒頭へ続く。
「それでどうしたんですか臨也さん。頭でも打ちましたかまったく新宿に引き籠っていればいいのにわざわざ静雄さんに殴られに来たんですかドMだったんですかそれは知りませんでしたついでに脳の中身もシャッフルされたようですね非常にいいことだと思います」
「いきなり饒舌だね帝人くん、でも残念今日はシズちゃんに殴られてないよ」
「それは残念ですね、それならどうして臨也さんが一般人みたいなことを言いだしたんですか?」
「それはだね帝人くんテレビで紛争地帯の特集があっていたからだよ。これは一般人の感性を持つ君に是非答えてもらいたいと思ったんだ」
「はあそう言われても、一体何を言えばいいのやら」
フロートのバニラアイスは溶けだして、緑の液体に白が混じり出している。
そこでようやく少年は飲まなければという義務感に駆られて再び口をつけた。氷の溶けだした、薄い甘さが舌に染みる。
向かいに座る臨也は未だあーだこーだと弁舌をふるっているが、帝人は所詮平和な日本で生まれて生きた平々凡々な少年である。戦争を経験したことなど勿論ない。故に答えられない。自明の理だ。
「ちょっと帝人くん、真面目に聞いてる?」
「聞いてません。一介の男子高校生にそんな難しいこと訊かないでください」
「まあ聞いてくれ。これはそんなワールドワイドな質問じゃないんだよ実はね」
そうだねえ例えばだ、と折原臨也は視線を宙に彷徨わせた。アイスはすっかり溶けてしまってグラスについた水滴がテーブルを濡らしている。
「ダラーズや黄巾族なんかの抗争だと思いなよ」
つい最近もいろいろ揉めてたよねえ、あの辺。にこにこしながらそんなことを言う。
この人最低だな、と帝人は思う。決して顔には出さないけれど。
溶けて白い膜になったバニラが緑と混ざって模様を描く。
「それでは改めて君に問おう、この世から戦争がなくならないのはどうしてかな?」
相対する誰もが顔を顰めるような極上の笑みと相対しても尚表情筋を動かすことのない少年はずずっと音をさせてぬるくなったフロートを啜り、いたってこともなげに
「愛しているからですよ」
陳腐な言葉を吐き出した。
「そう、愛。人間は愛しているから銃を握り剣を振り下ろし他人を害し陥れ欺き傷つける」
結局それを言いたかったんじゃないか。僕が答えても答えなくても同じことを言っただろう確証がある。
しかしそれはまるでどこかの誰かのようだと少年は言わなかった。
仕方がないのでちっとも量を減らしていない不味いフロートを啜ることで少年は青年に抗議することにした。
今日も世界は愛に溢れている。

(たまたま静雄さんが通りかかってくれないだろうか)
「そんな偶然あるわけないよ帝人くん!」
(・・・歓迎されてないことが分かってるんならどこか行ってくれないかな)