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まだらの目

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エピローグ 折原臨也曰く


 もう何年前だったかなぁ。俺は池袋の町をふらふらしててさ。そしたらさ、いたんだよね。彼女。痩せぎすの体にセーラー服着てさ、結構可愛いのに、今にも死にそうな顔で。それで俺はピンと来たわけだ。コレは使えるってね。 ほんとに偶然だったんだよ? 俺はシズちゃんとの喧嘩の帰りだったわけだし。まぁそれはどうでもいいんだけど。
 ……とにかく、俺は彼女に優しく声をかけ、食事をさせて、話を聞いてあげたわけだ。とはいっても、世間話みたいなもんだったけど。こういうのって無理に話させても仕方ないんだよねぇ。特に沙樹は喋りたがらないほうだったし、実は俺も詳しいところは知らないんだ。まぁ、色々コツがあるんだよ。ああいう子って、自棄になってるから、声かけると簡単に付いて来るしね。そういえば声がさ、すごいがらがら声で。しばらく口も利いて無かったみたい。
 話してみて、あんまり頭が悪かったら止めようと思ってたんだけど、まぁまぁだったかな? 君の方が頭は良いね。……褒めてるんだよ? そう、それで、俺も喧嘩してたわけだから、結構生傷だらけでさ、そしたらあの子、それ見て笑うんだよ。「お揃いですね」って。
 ……君はさ、俺が沙樹をああしたって思ってるみたいだけど、あの子は最初からああだったんだよ。最初から壊れてたの。そうじゃなきゃ、あの時自分から拉致られるような真似出来ないって。俺が命令したって? 命令じゃないよ、ちょっと誘導しただけ。それぐらいで他人のために自分を犠牲にするって、まともな神経じゃ出来ないよ。君だって、出来なかったろう? ……まぁ、その後の君の奮闘は知ってるから、君を貶めたいわけじゃないさ。
 話を戻すけど、沙樹って今も俺のこと好きだろ? 俺の命令を裏切った後も、俺を慕っているわけだ。俺だって沙樹には裏切られて、そこそこ痛い目にもあったけど、邪険にしたりはしてない。今だって可愛くて可哀想な子さ。つまりさ、沙樹は俺の言うことを聞いても聞かなくても、どっちでもいいんだよ。俺と沙樹の関係は変わらない。それでもあの時、沙樹は行ったんだよ。君のために。そして俺を裏切った。これも君のため。ね、分かるだろ?
作品名:まだらの目 作家名:窓子