マヨネーズを買いに行く時は帰るまで気を抜くな。
しばらくの間、山崎は銀時とそんなアホなやり取りをしていたが、急に万斉から殺気が放たれた。
「無駄話はその辺にして、これ以上恋路の邪魔はしないでもらおうか。白夜叉殿」
せっかくの逢瀬を邪魔された万斉の怒りは戦いの場で見せる殺気と同等のものとなる。
「それは出来ないね」
銀時はそう言うと、万斉を鋭い目で見据えた。
ようやく助けてくれる気になってくれたんだ、と思う山崎は、素直に銀時をかっこいいと尊敬する。
しかし世の中そう甘くはない。
「いや、なんか縛られてるジミー見てたら、こうさあ……」
銀時はそう言って一度口を噤む。
そして、ちょうどいい言葉を見つけると万斉の反対サイドから山崎を抱き寄せた。
「ムラムラします」
「オイぃ!」
堂々ととんでもないことを言ってくれる銀時に、山崎は腹の底からツッコミを入れる。
味方だと思っていた銀時のまさかの寝返りに、山崎は完全に混乱していた。
「ちょっと旦那、何考えてるんですか! そんなのダメですって! それに早く戻らないと副長に怒られますから!」
「あんなマヨネーズバカなんかほっとけばいいって。なんか言ってきたらマヨネーズ口に突っ込んで吸わせときゃあ大人しくなるよ」
「そのあと確実に切腹か殺されます」
「じゃあ、オレの所来ればいいじゃん。優しくしてあげるよ。ジミー君なら大歓迎」
「い、いや、確かに旦那は良い人だとは思いますけど、やっぱそういうのはいいです……」
「遠慮しなくていいって。どーんと来なよ。銀さん金は無いけど懐は広いよ〜」
そう言うと、銀時は山崎の頬へと唇を寄せる。
しかしその寸前で万斉が阻止するべく山崎を引き寄せた。
「邪魔をするなと言ったはずでござるよ。これで二度目でござる」
「全く、待てない子はこれだから……」
「横取りをしたのはそちらでござろう」
「いやいや、何言ってんの。仲良く歩いてるところをこんな所に引きずり込んだのはそっちでしょうが」
「某は最初からいかがわしいことが目的でここに連れ込んだのでござる」
「オレだって最初からそのつもりで隣歩いていましたー」
二人して何を張り合っているのかもう意味が分からない。
それ以上に、山崎は銀時の発言が引っかかってしまった。
「うそ、旦那、それマジで……?」
「あれ、気がつかなかった?」
一応確認、と思い恐る恐る聞いてみた山崎だったが、銀時の満面の笑みに希望が打ち砕かれる。
そして事態は更に最悪な状態となっていった。
「退殿は鈍感なところも可愛いでござるな」
「あー、それすっごく分かる。弄りがいもあるしね〜」
それまで険悪だった銀時と万斉だが、焦りまくっている山崎を見ているうちに二人の中で新たな案が浮ぶ。
「あれ、もしかして結構意見合う?」
「みたいでござるな」
「じゃあ、二人で頂いちゃう?」
「それも悪くないでござるな」
意気投合した二人は改めて間にいる山崎を見つめる。
「ということで話まとまったから、よろしく!」
親指を立てる銀時に、山崎は頭が痛くなってしまう。
「いや、あの、よろしくってなんなんですか! こういうの本気で勘弁してほしいんですけど……」
「別に遠慮しなくてもいいよ。二人よりも三人の方がいろいろと楽しいしさ」
「遠慮してませんってば、旦那!」
ありえない事態に涙目な山崎をさらに万斉が追い討ちをかける。
「全く、退殿は天の邪鬼でござるなあ。嫌よ嫌よも好きのうちと申すでござる」
「お前に対しては確実に嫌い以外無いから! なに都合のいいように解釈してんだよ、このストーカー!」
「本当に照れ屋さんでござるなー」
「人の話を聞け!」
「そなたの曲はいつ聴いても痺れるでござるよ」
「ちょっ、もう意味わかんねー! 誰か助けてー! 副長ーっ!!」
果たして土方の助けはあるのか!?
そんな哀れな山崎くんに幸あれ。
作品名:マヨネーズを買いに行く時は帰るまで気を抜くな。 作家名:いっしー