【土沖】土方にあげたい沖田と扉を開けない土方のハロウィン
土方を許さないのは土方ひとりで、だからこそ、その融通の利かなさを沖田は憎む。もっと、あらゆるものに手を伸ばして、信じて、貪欲になればいいのだと思う。
死んでいった色んな人をあんたは愛したのに、と、強く思う。
沖田は知らなかった。
土方が死霊の類を嫌うのは、自分たちがろくでもない形で人を斬ることもひとつにあるのだということは知っていても、彼が「もし本当にそんなものがいるのなら」などと考えることがあるのを知らなかった。
「もし本当にいるのなら、あいつが、せめてたった一度でも総悟に会いに来て、微笑んでやらないはずがないだろう」と、呪いを重ねる沖田の背中を見て思案することがあるのを知らなかった。知らずにただ、土方の幽霊嫌いを不自由に思い、瞑目し、そっと指を伸ばして触れてみたりするのだ。黒い髪を。まぶたのふちを。輪郭をなぞり、けれど、そうして分かち合えるものは少ない。途方に暮れるほど、少ない。
「お菓子をあげられなかったから、いたずらごっこにしやしょうか」
冗談じみた言葉を言ったつもりだったのに、それが思いのほかさびしい響きを持ったので、沖田は少し困る。困ると土方に伝わって、不思議なものをみるような目で眺められ、しかしそこには親しみと慈しみがある。
果ての無いことだと思う。
「……お前はさあ」
「ん?」
「本当に馬鹿だな。大馬鹿だ」
そんなことを口にした後、まるで背中に触れるような柔らかさで抱きとめられたので、あんたにだけは言われたくないですと返してやる。それから、人を招く部屋ではないのに、その主に人を招くこころはあることをとてもおかしく感じ、はるかな不自由を想像し、それから少しだけ、物悲しくなった。