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帝人くんのらぶ!

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暑い。
帝人はうーん、と低く唸って、体に張り付くような暑さから逃れようと寝返りを打つ。が、そうして壁に向かってみても、背中に温かいものが張り付いているようで、全く涼しくはならなかった。
あきらめて薄目を開ければ、まだまだ周囲は薄暗い。少しだけ視線をずらして枕元を見れば、デジタルの電波時計は午前2時11分をさしている。
こんな時間に目が覚めるなんて珍しい。
しかし暑すぎる、と帝人はそのまま、エアコンのリモコンに手を伸ばした。ピッ、と音をたてて起動した機械が、人工的な冷風を送ってくれてようやく少しマシになる。
はーっと息を吐く。
と、同時に背中に当たっていた温かい何かがもそもそと動いた。
「・・・え?」
ちょっと待て。
何で動く。
っていうか、つまりそれって・・・。
「んー・・・?みかどくん、おきちゃったのー?」
寝とぼけた声が耳に入ったその瞬間、帝人は、
「うわああああああああ!」
と悲鳴を上げてそのまま距離をとろうと体を動かし・・・。
どごっ!と壁に激突して、痛む額を押さえる羽目になるのであった。
「・・・っ!!」
「ふぇ?どうしたの帝人君。大丈夫?」
頭を抱えて再びベッドに沈む帝人を覗き込むように、長い黒髪がさらりとかかる。見せて、と無理やり仰向けにされた帝人の、その顔を挟むように両手をつく人影の正体は・・・残念ながら帝人に思いつく範囲で、一人しか居ないのだった。
「いっ・・・いざ、や、さん?」
「ん?赤くなってるよ、おでこ。帝人君のおでこかわいい」
ちゅーしちゃえ、とそのまま帝人の額に振ってくる唇は柔らかく、同時に帝人の体の上にのしかかってくる体も、女性らしい弾力に恵まれている。帝人は自分の現状がうまく把握できなくてひっと息を呑んだ。
「な、なんで、あの、鍵・・・っ」
あわあわとそんなことを尋ねる帝人に、もう一度かわいい、と呟いて臨也はぎゅうと正面から抱きつく。暑いし柔らかいし、いろいろと困る。っていうか足に足をからめないで欲しい、ホントマジで。
僕だって健全な男子高校生なんだから、そこんとこ忘れないで欲しい。切実に。
「だってこの部屋用意したの私だよ?」
「は、はあ」
「帝人君が個室欲しいって言った時点でさあ、合鍵くらい普通に作るよね」
「作んないでくださいよ!ってか、ええ!?だって今まで入ってこなかったし、ええ!?」
「んー、見つからなかっただけで、ちょくちょく入ってたけどね・・・」
「はあああ!?」
・・・折原臨也と言う女性について、4月から一緒に暮らしてきて帝人が把握した事実は、大体次のとおりだ。
彼女は美しい。造詣的な意味で。
すらりと伸びる脚線美、細いウエストに、大きすぎず小さすぎない胸、白い肌、つややかな黒髪は癖のないストレートで、顔のパーツはどれも完璧に計算されて配置されたような印象さえ与える。黙って笑っていればどこぞの王子様でもたぶらかせそうだ。
料理の腕は完璧。未だに一度も失敗がない。帝人に持たせてくれるお弁当は栄養どころか彩まで計算しつくされている。お裁縫も浴衣を縫えるくらいにできる。掃除洗濯など、帝人がやると言ってもてきぱきと終わらせてしまう。そしてにっこり笑って、
「どう?結婚したくなった?いつでもプロポーズしていいよ」
と尋ねる様子に、帝人はいつも言葉に詰まる。
折原臨也は美しい。そして帝人のことを好き過ぎて、どこか行動がおかしい。8歳も年上なのに。まあ年齢のこと言ったら怒るので言えないが。
お弁当の中身をことごとくハート形にしたり、帝人の洗濯物に顔をうずめて喜んだり、年上のお姉さんに美味しくいただかれる系のAVを帝人に見せようとしたりする。前二つは我慢できるとしても最後のは最低だ。
「っていうか、暑いんですけど!」
「暑いねえ、溶けちゃいそうだねえ、早く帝人君に溶かされたいなあ」
すりすりと帝人の頬に頬を摺り寄せて、臨也は笑う。


「ねえ、いつになったら食べてくれるの?」


耳元に、囁くように言われた言葉に、本当に勘弁してください、と帝人は頭を抱えるのである。





臨也が、帝人とオフで会った約1年前のその日まで、池袋に悪名をとどろかせていた大悪党と知ったのは最近のことだった。
決して関わってはいけない人間として有名だったらしいし、喧嘩人形と名高い平和島静雄と殺し合いの喧嘩までしていたらしい。らしい、というのは、それらをすっぱりやめたあとの臨也しか、帝人は知らないからだ。
何でも、ある日突然公衆の面前で、
『私、今日から花嫁修業に入ります!』
と高らかに宣言して以来、一度も喧嘩はしていないのだという。裏街道をひた走っていたはずなのにそれもぴたりとやめ、悪趣味な人間観察もきっぱり投げ捨てて、カルチャースクールで和裁と料理を習っていたというからその変貌たるや、知人たちを混乱の渦に叩き落とすに十分だった。
友人の正臣のつてで知り合った門田など、竜ヶ峰帝人と言う名前を聞いただけで、しみじみと『お前は大変なのに好かれたなあ』とため息をついたほどである。
とにかく臨也の中で、帝人と結婚するというのは決定事項らしい。恋愛経験値の乏しい帝人は、しかしそんな風にアプローチをされても戸惑うばかりなのである。
「あ、の。臨也さん?出てってくれませんか」
「やだ」
「あ、あのほら、2人でくっついてると余計に暑いじゃないですか?」
「帝人君さあ、私の姿を見て何か思うことないの?」
そういわれましてもねえ!
帝人はちらっと、仰向けに寝る自分の上に乗っかって、少しだけ上半身を起した格好の臨也を見る。キャミソール1枚に、ホットパンツ丈のジャージ下を着ただけのその姿は、明らかに帝人を挑発する為であるらしい。
敢えて問いたい。ノーブラですか。
「うん、ノーブラだから触ればいいよ」
「心読まないでくださいって!ぎゃあ!ちょっ、まっ!」
はいどうぞ、と無理やり手をとられ、そのまま臨也の胸に押し当てられる。あまりの生々しさに、帝人は悲鳴を上げて慌てて臨也の手から逃れた。頬に熱が集まっていくのがよく分かる。頭の中が沸騰しそうだ。
「じょ、女性はそういうことしないでください!もっとこう・・・慎ましやかに!」
あまりの事態に思わず声が裏返るが、必死で叫べば臨也は艶然と微笑むのであった。
「4月、5月、6月。もう3ヶ月も待ってあげたんだから、十分慎ましやかだよねえ?」
そうしてその白く細い手が、ゆっくりと寝巻き代わりにしているTシャツのすそから入り込んできて、帝人のわき腹から腹筋の辺りをなでる。
「ちょっ、と、ほんとに・・・っ」
「ベタなAVみたいでちょっとどうかなっては思うんだけどさあ、晩生な彼氏をその気にさせるには、あざといくらいのことしないとだめなのかなあって、最近思い始めてるんだよね。帝人君どういうのが好き?舐めてあげようか、それとも縛る?」
ねえ帝人君?と小首を傾げつつ、その手が下半身のほうに伸びるのを感じて、ひぃいい!と帝人は心の中で叫んだ。
いやいやちょっと待って。
確かに明日は日曜日だけど、ってちがうそこじゃない。
その前に彼氏ってどういうこと!僕まだ返事してないんですけど!
「キスされても抵抗しないんだから彼氏でしょ」
作品名:帝人くんのらぶ! 作家名:夏野