二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

こころのむこうがわ2

INDEX|4ページ/4ページ|

前のページ
 

正臣は、妙な胸騒ぎを感じていた。
やっと平穏な日々を取り戻せたはずだった。
帝人も杏里も、何事もなかったかのように笑ってくれていた。
事の元凶となった情報屋の男も、あれから何ヶ月も行方が知れなくなっていた。
もう、心配事なんて何もないはずだった。
なのに、ここ数日、帝人の様子がおかしかった。
ぼうっとしていることが増え、突然何かにひどく驚いたような仕草をするので、何気なく聞いてみても、笑ってごまかされた。
そして今日、近々に迫った学校行事の準備の手伝いのため一緒に帰れないと伝えに行った去り際に、またつまらない冗談を言って笑わせたあと。
手をひらひら振りながら帝人の教室を去ろうとした正臣の背に、帝人が何事か声をかけた。
「……ね、正臣。」
あまりに小さな声だったためよく聞き取れず、振り返って聞き返すと、帝人は、「なんでもない。」と言って手を振った。
その時、困ったような微笑みを浮かべた帝人が、なんだか今にも消えてしまいそうに儚げに見えた気がして。
手伝い中もそのことが気になって、何も手につかず、呆れたクラスメイトに、「紀田、今日はもういいよ。」と言われ、ほとんど残った意味なく、帰宅することになった。
帰路の途中、どうしても気になって、正臣は帝人の家に向かって駆けた。
ひどく悪い、予感がする。
胸の奥がひどくもやもやして、まるで、帝人が突然学校に来なくなってしまったあのときに感じたものと同じような。
今日、帝人は最後に何て言っていた?
あれは、「ごめんね」と言っていたのではないか。
何を、何故謝る必要があるんだ、帝人…!
悪い予感を必死に否定しようとして、心の奥から湧き上がる不安が邪魔をする。
やがて、帝人が賃貸しているアパートの部屋の扉の前にたどり着いた。
「帝人、いるか!?」
インターフォンを押して反応がないのを確かめると、待ちきれず、扉を叩く。
部屋の中からは何の物音もしなかったが、試しにドアノブを回してみて、気づく。
鍵がかかっていない---。
ノブを握り締めて、扉を勢いよく開く。
「帝人!!」
勢い込んで飛び込んだ部屋の中は、夕暮れの闇に沈んでいた。
そこに人影はない。
がらんとした部屋の中ほど、居間の中央に、白い封筒が鎮座していた。
歩み寄り、恐る恐る、それを手に取る。
その封筒の宛名の部分には、「正臣へ」と書いてあった。
そして、中に納められていた便箋には、慣れ親しんだ帝人の几帳面な字が並んでいた。
そこには、今まで友達でいてくれたことに対する感謝の言葉と、勝手にいなくなることへの謝罪、そして最後に、こんなことが書かれていた。

”この感情が愛情と言えるものなのか分からない。
でも僕は、彼の側にいたいと思う。”

それを何度も何度も読み返してから、正臣はがくりと膝をついた。
胸を襲う痛みに耐えられなかった。
帝人が何も相談してくれなかったことが、今度こそ帝人を永遠に失ってしまった確信が、心を苛んだ。
うずくまり震えていた正臣は、やがて、拳を畳に叩き付けた。
「…っかやろう。」
正臣は泣いていた。泣きながら、何度も、もうここにいない親友に向かって、言った。
みかど、お前は馬鹿だ、大馬鹿だよ…。

その後、世界のどこかで、整った顔立ちの青年と童顔の少年、二人組の情報屋の姿が目撃されたという話が、風の噂で伝わってきた。
作品名:こころのむこうがわ2 作家名:てん