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ライチ詰め合わせ

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「げっ」

 タミヤ君が机の中を覗いて嫌そうな声を出した。昨日配られた大事なプリントを忘れちゃったのかもしれない。でも、取り出されたそれは紙ではなくて綺麗な包装紙でラッピングされた箱だ。あ、これ見た事がある。近所の文房具屋の包装紙の柄だった。

「タミヤ君、昨日筆入れ壊れたって言ってたから誰かくれたんじゃないかな……」
「何で」
「何でって……えっと」

 タミヤ君はモテるのに女の子をすごく嫌がっている。勿体ないよ、というダフ君が呆れたように言っていた事を思い出した。僕もそうだと思う。

「……タミヤ君の事、好きだからじゃないかな」

 タミヤ君はすごく優しい。僕が虐められていたら助けてくれるし、一緒に遊んでくれる。先生からも気味が悪いって言われてる僕なんかと。
その優しさを女の子にも向ければもっとモテるはずだ。なのに、今もこうして苛々している。タミヤ君は女の子が嫌いなんだろうか。僕も(ほとんどの人だけど)苦手だけど、好きだって言われたらきっと嬉しい、のに。

「いいよ。隣のクラスの奴に渡してくる」
「で、でも」
「好きでもない相手に好きって言われてもうざいだけだろ」
「……そうなんだ」

 僕にはタミヤ君の気持ちがよく分からない。何で嫌なんだろ。

「タ、タミヤ君は」
「ん?」
「誰に言われたら嬉しいの?」
「あー……その内教えてやるよ」

 バリバリ包装紙を剥がして箱を開けると新品の筆入れが出てきた。本当にあげてしまうらしくて、タミヤ君は教室から出て行こうとした。それをぼんやりと眺めていると、少し拗ねた顔で手招きされたから後をついていく事にした。隣のクラスに行くだけなのに、どうして僕も行くんだろう。タミヤ君と居られるのは嬉しいけれど。

「なあ、カネダ」
「何、タミヤ君?」
「俺の事好き?」
「う、うん、好きだよ」

 俺も好きだ。とタミヤ君は少し寂しそうに笑いながら僕の頭をくしゃくしゃ撫でた。

作品名:ライチ詰め合わせ 作家名:月子