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ライチ詰め合わせ

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 クラブに行くと、ゼラの姿はなく代わりにタミヤとカネダの姿があった。ここからではよく見えないが、口の端を赤く滲ませているタミヤが、うじうじと泣いているカネダを宥めようとしているのが分かる。大方、また虐められていたカネダをタミヤが助けに入ったのだろう。よく見る光景だった。

(ああいうの、うざいんだよね)

 靴に画ビョウを入れられたり殴られたり蹴られたりして、どうする事も出来ず泣くだけのカネダが煩わしい。虐められた側に非はないと大人は力説するが、全くの偽善論だ。ああやって反応するから虐める側の嗜虐心を刺激してしまい、また手酷い仕打ちを受ける。あまりにも下らない無限ループだ。

 けれど、もっと苛つかせるのはタミヤだった。ああやっていつも助けに来てカネダを慰めている。それを小学生の頃から繰り返していて、効果がないと知りつつも手を差し伸べているのだ。ああして自分以外何も見せないように二人きりになって。

(あ、抱き締めた)

 こっちにはゼラとの関係がどうこう言ってくるくせに、自分だって男好きなのが余計苛々させた。しかも、カネダが何も知らないのをいい事に勝手に親友のボーダーラインを越えようとしている。胸元に顔を埋めているカネダがあの顔を見たらどう思うだろう。

 浜里達を強く非難してもタミヤからしてみれば、虐めはカネダを縋らせて信頼させるためのいい道具だ。痛めつけられた好きな相手を嬉々として抱擁する。まるで罠にかけるようなやり方だ。

「悪趣味。すっごく」
「覗き見してたお前に言われたくねぇよ」

 泣き疲れたのか眠ってしまったカネダをおぶったタミヤが露骨に顔をしかめて睨んで来た。本当に親友以外には相変わらずの反応を見せてくれる。

「僕も虐められっ子になれば、ゼラに構ってもらえるかな」
「お前なあ」
「だってそんなに醜いのに愛されてるなんて……痛っ」
「何が愛だよ。気持ちわりぃな。俺とカネダは親友なだけだ」

 手が塞がっていると思ったら足で蹴られて地味に痛い。見上げた先には怖い顔をしたタミヤがいる。背中にカネダがいなかったら拳が飛んで来ていたかもしれなかった。

「偽善者ばっかり」

 周りに綺麗な顔と褒められても一番の人間に振り向いてもらえないなら、意味はない。周りに貶されて泣くだけで一番の人間に惜しみ無い愛情を注がれるカネダが羨ましかった。

作品名:ライチ詰め合わせ 作家名:月子