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ライチ詰め合わせ

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 果たして人間には前世を記憶する機能が付いているだろうか。それ以前に転生や輪廻など魂が別な人格を持つ事は有り得るか。この思考は死後も消滅せずに残り続けるのか。何れにせよ、それらを知るには死を体験するしかないのである。

「大丈夫か、金田」
「うん、少し熱っぽいだけだから」

 中学の時には精神的に響くような苛めを毎日受けていたが、高校に入ればぴたり、と止んだ。あのメンバーがいなくなったせいもあるが、自我を表に出す事を多くしたせいもあるだろう。環境が変わったとしても苛めはどこにでも潜んでいる。自身も変わらなければならなかったのだ。根暗と呼ばれる時もたまにあるが、陰険な仕打ちを受ける事は無くなった。

「そうか。良かったよ、何かされてなくて」

 田宮とは中学の時から一緒だった。家も近く、毎朝二人で学校へ通う仲で金田にとって親友のような相手だった。実際そうなのかもしれない。苛めを受けていた頃も唯一見捨てず助けに来たのは彼だった。
 田宮からは被保護者として見られているらしい。高校になって平穏が訪れた今も金田をよく気にかけている。こうして具合を悪くして保健室で寝込んでいると、どこから聞いたのか授業中でも駆け付けてくる。その過保護ぶりは学校中の話題となった。田宮は顔もよく、身長も高い所謂イケメンだったため、元々有名人だったのだ。

「金田熱はあるのか?」
「うん、風邪引いたみたいなんだ。今日は早退しようと思う」
「そうだな、こじらせるときついし。ちょっと待ってろ荷物取ってくる」

 保健室から出て行った田宮と入れ替わりで入って来たのは、職員室での会議に参加していた保健医だった。無断で保健室のベッドを占領していたので、金田は反射的に起き上がろうとする。その動作を鞄を片手で二つ持った田宮に「病人が急に起き上がるな」と止められた。いつ戻ってきたのだろうか。

 彼は簡潔に保健医に金田の具合を説明すると、早退届を見せて「俺も一緒に帰ります」と告げた。保健医も金田もその一言に困惑したが、ちょうどいいタイミングで怪我人がやって来たので前者はそちらに目を配る事になった。

「た、田宮くん」
「帰ろう、金田」

 片方の鞄を差し出して片方の鞄を自分の肩に背負い、保健医からの追及を避けるように保健室から出て行く田宮に、金田も起き上がって後を追う。授業中の廊下は静寂に満ちていた。夏が近いというのにひんやりとした空気が漂う。火照った体にはちょうどいい。

「田宮くん僕大丈夫だよ。一人で帰れる」
「別に俺も今日授業サボりたかったんだ。どのみち帰るつもりだった」
「……嘘だよ」

 ほんの少し強い口調になってしまう。けれど、田宮は気を悪くした様子もなく金田だけに見せる柔らかい表情で呟く。

「金田が心配だからずっと側にいてやりたい」
「な、何かそれ普通は女の子に言うんじゃないのかな」
「分かってる、金田は男だろ。でも女より大事だ。彼女とかよりも大事な……昔からの親友だよ」

 田宮は不思議な男だった。苛められていた自分を何の見返りを求めずに救い、そのくせ周りには執着しない。友人は多い方だが、金田に対する接し方とは何かが違う。



 そんな彼といるせいだろう。最近奇妙な夢を視た。ロボットに体を真っ二つに折られて殺される内容だった。そして、血を吐きながら最後に何故か心の中で田宮の名を呼んだのであった。

作品名:ライチ詰め合わせ 作家名:月子