とある朝の情景
朝陽が差したベッドの上に、もぞりと動く物体が二つ。
その光の眩しさに目を眩ませながら起き上がったのは、彼女だった。
「、いざやさん」
寝惚けているのか、名前を呼んで。俺をボーっと見つめている。
あれ、もしかして今呼んだのも無意識?天然って恐ろしいね。
「むぅ…」
そんなことを思っていると次は何を思ったのか。
眉を寄せて少し拗ねた顔を向けてくれた。
これもたぶん無意識なんだろうけど。
低血圧な彼女はたまにこうやって、甘えてくる。
「どうしたの?」
未だにむーっとしている彼女を見上げて頬に手を這わせれば。
はふ、と息を静かに吐いて俺と視線を絡ませて言ったんだ。
「ねむい、です」
「っぷ、」
けれど、彼女の言った言葉があまりにも可愛くて思わず吹きだしてしまった。
ボケを狙っているのか、そうなのか。眠いなら勝手に寝れくれて構わないのに。
彼女はこうやって俺に確認を取ってから眠る。
それに自惚れてしまってもいいのだろうか。
──愛されている…。
そう思ってもいいだろうか。
「…なんでわらうんですか」
目の前の艶やかな黒髪を撫でて、クスリと笑えば。
少し機嫌を損ねた彼女が更に頬をふくらましている。
「君が可愛かったから、つい、ね」
そしてごめん、と一言詫びるとその頬がしぼんで。
なんだかそれがリスのようでまた笑ってしまった。