とある朝の情景
「もういいですっ」
あ、しまった。
すっかり拗ねてしまった彼女の機嫌を直すのに手が掛かりそうだ。
でもこれならきっと彼女も許してくれるだろうし機嫌も好くなるだろう。
…怒っても可愛いけど、そろそろ、ね。
笑った顔も見たいな。
「帝人君、こっちむいて?」
「……。」
「向いてくれないとキスができないよ」
そう言えば、ゆっくりと逸らした顔を戻して。
俺の瞳をむーっと睨んでいるらしく、見つめる。
「やっと見てくれた」
「…いいからはやく、ください」
…うん、朝の帝人はつくづく可愛いと思わされる。
けどそんなことを言ったら今度こそ修復不可能なので、心の中だけで思う。
「ンッ」
そして、強請るように寄せられた桃色の小さな唇。
それに吸い寄せられるようにして口付けを落とした。
静かに唇を離してから、瞼を開けてみれば。
少し頬を赤くした帝人君が柔らかく微笑んでいた。
「おかわり、です」
fin.