Bellezza
帰省
「ミスタ、僕は家族と連絡をとりたいなら、伝書鳩を使ってくださいねっていいましたよね?」
「いや、だから、そんなに時間が経っているなんて思わなかったんだよォ」
「すいません、ブチャラティ、僕はてっきり、もう連絡はしてあるものだと思っていたんです」
「いや、こうして元気な顔が見られたんだ。よかったよ」
(いささか、元気すぎる気もするがな……)
ジョルノの肩を抱き、デレデレしている弟のしまりのない顔を見て、ブチャラティは安堵しながらも思い切り脱力する。
下手をすれば命を落とすかもしれないとの覚悟で再び訪れた館で、新婚さながらのいちゃつきぶりを見せつけられてしまった。
館の主であるジョルノとすっかりデキあがってしまったミスタは、恋人に夢中で家族に連絡をとるのをすっかり忘れていたのだという。
「ジョルノ、オメーといると、時間が経つのが早すぎるぜ……」
「僕もです。貴方がいなかった頃は、あんなにも時が経つのを遅く感じていたのに、貴方とこうしていると瞬く間に時間が過ぎていってしまう」
人目も憚らずイチャイチャしている恋人達に呆れながらも、ブチャラティはよかったと思った。
それがミスタ自身の申し出とはいえ、ブチャラティは大変な役目をミスタに押し付けてしまった。
そして寂しげな吸血鬼の少年に対しても、自分は不誠実だったのではないかと後悔していた。
けれど二人が互いのことを必要な存在だと認め合い、想いあう姿に、これも運命だったのではないかと思う。
ジョルノとミスタに出会うべき運命であり、弟はこうして生涯守るべき愛する人をみつけた。
ならば祝福してやろう。
長いこと連絡をとるのを忘れていたミスタに対しては、何かいってやりたい気持ちもあったが、ブチャラティにはジョルノに対して負い目がある。
これほどのラブラブぶりを見せつけているこの場で、下手に突っ込んだりしたら薮蛇になりそうだ。
そう賢明に判断して、ブチャラティは必要以上の口をつぐむ。
「それでな、ミスタ。皆が心配している。一度家に顔を見せに帰ってこないか?」
ブチャラティは、ここに来る前も暗い顔をしていた兄弟達の顔を思いだして、ミスタにそう告げた。
「んー、でも、なァ……」
ミスタはブチャラティとジョルノの間で視線を行ききさせて、あまり気が乗らないといった風に口を濁す。
「ミスタ、帰ってあげてください」
そんなミスタにジョルノは言う。
「貴方には心配して待っていてくれる人がいるんですから、安心させてあげないとダメですよ」
「でもジョルノ……」
にっこりと笑うジョルノに、ミスタは抗弁しようとするが遮られた。
「貴方がいない間も僕は貴方を想って、貴方の帰りを待っています。貴方が帰ってきてくれるなら、待っている時間も幸せです」
「ジョルノ」
「でも早く帰ってきてくださいね。ミスタと一緒にいられない時間は、とても遅く感じられるだろうから」
「ああ、わかってる。顔をみせたら、すぐに帰ってくるよ」
俺は、その日のうちに家に帰る予定だったが、天候が崩れたため足止めされて、出発は翌々日になってしまった。
これもまたよくないことになる要因のひとつだったと、後々にオレは気づかされることになる。