あぁ。なんて滑稽で愛しい!!
息が苦しい。さすがに、ここまで追いかけっこをしていると身体がきつくなってくる。
裏道をするすると走りながらふっと思考を周囲に飛ばす。後ろからは俺を追ってシズちゃんが走ってくる。時折後ろを見て何か投げて来たりしないかを確認する。相変わらず、俺の名前を呼んで、すごい速さで迫ってくる。まったく・・・あんな状態で迫られる趣味はないんだけど・・・
息を整えながらもくらっとする頭をどうにか働かせようと、地図を思い浮かべるもそれを上手く活用することができない。胸とわき腹からの痛みがどうしても思考と身体の働きを鈍らせる。どうして、こんな時に限ってシズちゃんに会うんだか・・・
「あ、ははっ!!こ、こまでっ・・・はぁ・・・追いつ、いてっ・・・み、な、よっ」
強がって声だけそう投げつつ逃げるルートを探す。しかし走っている衝撃でさらに痛みは増してきて、次第に足がもつれそうになる。
後ろから怒り心頭で迫ってくるシズちゃんの声に、どうにか振り切れるように、とそれだけを願う。こんな状態、シズちゃんには見せたくはない。いつだって、俺はシズちゃんが手加減なく怒りをぶつけられる相手じゃないといけない。それ以外に、俺はシズちゃんの目をこちらへ向ける術を知らないから。手加減されるような状態では、とても彼の相手は務まらない。
今まで、そうやってきた。
これからも、そうやっていく。
そう、やらなければいけないんだ。
気付いた時には、もうすでにこの関係を望んでいたから。この関係以外知らないから。どうすれば、傷ついた獣のような、あの色素の薄い瞳に映ることができるだろう。どうすれば、彼の注意をひきつけられるだろう。他の人と同じような立ち位置では満足できない。俺だけの立ち位置が欲しい。俺と、彼だけの特別な関係が欲しい。
気付いた時にはすでにそう望んでいたから、それを可能にするように、持てるすべてを持ってして行動してきた。そうして、出会ってからすべて築いてきた。その関係の中に、遠慮はいらない。そんな関係を望んでいるわけではないから。だから、だから。今ここで、どうしても倒れるわけにはいかない。どうしても、彼に俺が弱っているところを見せるわけにはいかない。
いつでも、不敵に笑って、挑発して、するっと手から逃れるような俺でなければいけない。シズちゃんをイラつかせるような、そんな俺でなければいけないから。
真っ白な思考に、ひたすら、在るべき自分の姿を思い描いて走り続ける。明らかにいつもより息があがっている。そんなんじゃあ、ダメだ。そんなんじゃあ、ダメだ。何があっても、俺はシズちゃんの前で弱みを見せてはいけない。弱った姿を見せてはいけない。
どうにか意識を保った状態でしばらく走り続けていると、予想通り目の前に数メートルのブロック塀が現れた、周囲を見回して足掛けになりそうなパイプやへこみを確認する。ここを超えれば、いつも通りに超えられれば、どうにか捲けるかもしれない。
目の前にブロック塀が近づいて、それにとびかかろうとした瞬間、ぐんっと後ろへと重力がかかって意図しない構図の空とビルの隙間が見えた。その時初めて、手の届く範囲にシズちゃんが迫っていたのだという事に気付いた。
意識の最後、切れ端に映った端正な顔立ちの化け物の表情はひどく驚いているようで、人間的で、それを確認した俺はどうにか、もう二度と目覚めることのないように祈ってブラックアウトしていく中で、せめて、彼の手で自分の人生が閉じられることはひどく幸せなことのように感じた。
裏道をするすると走りながらふっと思考を周囲に飛ばす。後ろからは俺を追ってシズちゃんが走ってくる。時折後ろを見て何か投げて来たりしないかを確認する。相変わらず、俺の名前を呼んで、すごい速さで迫ってくる。まったく・・・あんな状態で迫られる趣味はないんだけど・・・
息を整えながらもくらっとする頭をどうにか働かせようと、地図を思い浮かべるもそれを上手く活用することができない。胸とわき腹からの痛みがどうしても思考と身体の働きを鈍らせる。どうして、こんな時に限ってシズちゃんに会うんだか・・・
「あ、ははっ!!こ、こまでっ・・・はぁ・・・追いつ、いてっ・・・み、な、よっ」
強がって声だけそう投げつつ逃げるルートを探す。しかし走っている衝撃でさらに痛みは増してきて、次第に足がもつれそうになる。
後ろから怒り心頭で迫ってくるシズちゃんの声に、どうにか振り切れるように、とそれだけを願う。こんな状態、シズちゃんには見せたくはない。いつだって、俺はシズちゃんが手加減なく怒りをぶつけられる相手じゃないといけない。それ以外に、俺はシズちゃんの目をこちらへ向ける術を知らないから。手加減されるような状態では、とても彼の相手は務まらない。
今まで、そうやってきた。
これからも、そうやっていく。
そう、やらなければいけないんだ。
気付いた時には、もうすでにこの関係を望んでいたから。この関係以外知らないから。どうすれば、傷ついた獣のような、あの色素の薄い瞳に映ることができるだろう。どうすれば、彼の注意をひきつけられるだろう。他の人と同じような立ち位置では満足できない。俺だけの立ち位置が欲しい。俺と、彼だけの特別な関係が欲しい。
気付いた時にはすでにそう望んでいたから、それを可能にするように、持てるすべてを持ってして行動してきた。そうして、出会ってからすべて築いてきた。その関係の中に、遠慮はいらない。そんな関係を望んでいるわけではないから。だから、だから。今ここで、どうしても倒れるわけにはいかない。どうしても、彼に俺が弱っているところを見せるわけにはいかない。
いつでも、不敵に笑って、挑発して、するっと手から逃れるような俺でなければいけない。シズちゃんをイラつかせるような、そんな俺でなければいけないから。
真っ白な思考に、ひたすら、在るべき自分の姿を思い描いて走り続ける。明らかにいつもより息があがっている。そんなんじゃあ、ダメだ。そんなんじゃあ、ダメだ。何があっても、俺はシズちゃんの前で弱みを見せてはいけない。弱った姿を見せてはいけない。
どうにか意識を保った状態でしばらく走り続けていると、予想通り目の前に数メートルのブロック塀が現れた、周囲を見回して足掛けになりそうなパイプやへこみを確認する。ここを超えれば、いつも通りに超えられれば、どうにか捲けるかもしれない。
目の前にブロック塀が近づいて、それにとびかかろうとした瞬間、ぐんっと後ろへと重力がかかって意図しない構図の空とビルの隙間が見えた。その時初めて、手の届く範囲にシズちゃんが迫っていたのだという事に気付いた。
意識の最後、切れ端に映った端正な顔立ちの化け物の表情はひどく驚いているようで、人間的で、それを確認した俺はどうにか、もう二度と目覚めることのないように祈ってブラックアウトしていく中で、せめて、彼の手で自分の人生が閉じられることはひどく幸せなことのように感じた。
作品名:あぁ。なんて滑稽で愛しい!! 作家名:深山柊羽