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【土沖】S王子の調教/同人誌サンプル

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サンプル1


※サンプルはWEB用に改行を入れています











土方は、本当のところ、沖田がこの先に見るだろう悲しみのすべてを厭わしく思うことがある。


甘やかすつもりは毛頭ないし、こんな組織に置いておきながら矛盾した感情だが、それでもふとした時などに、これへ降り懸かる不幸がせめて少なければいいと思考を巡らせる。
そう上手く出来ていないことは知っているのに、もう総悟にはこれで十分だろうと煙草を消費して、そのフィルターを噛んだりするのだった。年長者として長く傍にいた末の不可抗力だろうが、なんとも忌々しい話だ。





この度に起きている、一連のテロ事件に関してもそうだった。

土方が、傍にたったひとり沖田だけを連れて、その植物園に出向いた今日の八月の午後のこと。

この日は紺色によく晴れた日で、山の向こうにはもくもくと遥かな入道雲が積み上がっていた。けたたましい蝉の音が頭に響いて仕方なく、車の助手席を降りた土方は、駐車場のアスファルトから立ち昇る熱に思わず顔を顰める。


「……んだ、この、馬鹿みたいな暑さは!」


この時期でも山の方は涼しいなどと、誰がそんなでたらめを言ったのだろう。ただでさえ、隊服のかっちりとした作りは喉元を絞めて暑苦しいのだ。ここへは職務で来ているのだから、まさか園の職員へ挨拶をする前に上着を脱いで、タイを解くわけにもいかない。

反対に、運転席のドアを閉めた沖田はまるで平気な顔をしていた。それどころかひどく楽しそうな仕草で小首をかしげ、こちらに手を伸ばしてきたりする。


「眉間に皺が寄ってやすぜ。これくらいで仕方ねェなあ」
「黙れ。俺を摂氏三百度の星から来たような宇宙人のお前と一緒にすんな」
「残念ながら俺の故郷はサディスティック星でさァ。出身じゃなく、あんたの修行が足りねェだけでィ」


こうして右手を捕らえみても、そう言ってなお涼しい顔をしているのだ。こんな暑気のさなか、じゃれついてくるのに一々応えていては後の仕事に差し支えるので、土方は白い手首から指を離して溜め息をつく。

我々がこの日訪れた植物園は、屯所から車を飛ばして一時間ほどの場所にあった。

この日の第一木曜は、園の定めた休園日だ。そのためにまずは、職員用出入り口へと向かわなければならないのだが、そこまではこの焼けたアスファルトの上をいくらか歩くのでげんなりする。


「遠いなおい……」
「いいからさっさと行きやしょう。こんな所でぐずぐずしてたら、お日様に溶けてカタツムリになっちまう」


沖田はそう言ったあと、パトカーのキーをポケットに入れながら、角出せ槍出せ目玉出せ――と梅雨の歌を口ずさんだ。


「お前に生えるのは悪魔の角だろ」
「土方さんには鬼の角が生えてくるんだろィ。こんな」


そう言って両手の人差し指をぴんと立て、鬼の真似をしながらころころと笑った。本当に、人に悪態をつくときだけはその目はきらきらして子供のようだ。




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