【土沖】S王子の調教/同人誌サンプル
立ち上がろうとしたのにどうしても駄目で、反対に、傍に居る土方さえもこちらに引っ張ってしまいそうだ。どうしようと心根を零したら、しゃがみ込んだ土方が髪に触れてきて、思わず手を伸ばして背中にぎゅうっと腕を回した。
「目が痛い」
猛烈に、焼けるように痛かった。故郷の景色が双眸の奥でじわじわと熱を持ち、耐え難いほどに感じて顔を顰める。土方に額を擦り付ける。
「ちゃんと覚めるから、それまで、目を瞑ってじっとしてろ」
そう言って、土方は沖田の頭を撫でる。輪郭を確かめられたような気になって、いっそう顔が上げられなくなる。
かつての故郷で、同じように触れてくれた人はもういないのだ。それなのに、沖田はいつまでもその体温を忘れられない。
望郷の世界が、背後でぽっかりと口を開けている。
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本文に続く
作品名:【土沖】S王子の調教/同人誌サンプル 作家名:てまり@pixiv