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 きみのすきなひとはだれ?
 ぼくのめのまえでカレーたべてるあなたです。





 余裕めいたいつもの笑みを作ろうとして失敗したらしい臨也は、ぎこちなく口元だけ歪めてポーカーフェイスを気取っていた。ああ。こんな人でも動揺するんだ。そう思ったら何だか非日常的な貴重なものを目撃できたみたいで、面白かった。
 「あ」「えっと」「その」「だから」「つまり」「それって」「だから」「えっと」などと意味のない声をひとしきり上げた臨也は、分り易いほど狼狽えているらしい。目が泳いでる。それでいて、こちらからじーっと見つめていると、たまに目があって、すぐ逸らされる。でもまた視線がすれ違う。その繰り返し。面白い。
 上等な牛肉の入ったカレーを堪能しながら30秒。
 珍しい臨也の観察をしていたら、何やら覚悟を決めたみたいな尋常じゃない顔で、ようやく彼が視線を合わせてきた。恐る恐るという表現がぴったりなほど、こわごわと、小さく、問い掛けられた。

「それ、……本気?」

 何て答えてみようか。
 ここでエスプリのきいたジョークでも返した方が彼を楽しませてあげられるのかもしれない、と思いつつも、何も面白そうな良い案が思いつかなかったので素直に答えてみた。
 素直に、僕の、気持ちを。 

「さあ。信じないなら別にそれでいいですって言ったでしょう。  どーでもいいので  」

 心底どうでもいい。
 彼の問いに答えてはいなかったが、それが僕の気持ちだから、素直に答えてみた。(ちょっとつまらなすぎたかな?)
 臨也は「なんだよ、それはっ」と徐々に声を荒げはじめた。やっぱり僕の回答はお気に召さなかったらしい。(でも夜分に騒がないで欲しいな)

「どうでもいい、だなんて……よくもまあ俺に向かってそんなセリフが吐けたね…!」
「だって、本当にどーでもいいんですよ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!よくないよ!全っ然よくない!重要なことなんだよ俺にとっては!!本当に本当に本当に本当に、それって本気なの?俺は君の言葉を本気で受け取っていいの?本気にしちゃってもいいの?本気にしちゃうよ?信じちゃうよ?いいんだね?あとで実は嘘でしたなんて言ったら殺すよ。それか×××××××して×××にした上で一生俺のもとで飼い慣らすから。それでもいいんだね今更前言撤回なんてさせてやらないからな嘘だったら俺本気で怒るからそこんとこ弁えろよ!!」
「……………嘘は吐いてませんから、そんなに大声出さないでくださいよ……。今何時だと思ってるんですか?近所迷惑でしょう」
「っそ、そんなことこそ今はどうでもいいだろっ」

 今が夜分でありここがボロいとは言え集合住宅であることを忘れていそうな彼は、壁の薄さも考えずにそう吐き捨てた。何だか、酷く興奮した野生動物みたいに近付き難い。(っていうか、さっきから全然カレーに手つけてないけど、いいのかな。折角作ってあげたのに、冷めちゃうよ)

「帝人君は、俺のことが……すき、なんだ?」
「随分と思い上がったセリフですね、と言いたいところですが、残念ながらその通りですよ。ずっと好きでした。臨也さん」

 臨也からの出資があったため、今夜のお肉は上質だ。美味しい。スプーンの上にごろりと転がった大きめの肉の塊を口に放り込み、咀嚼する。旨い。材料費さえ出してくれるなら、たまにはこうして彼に食事を作ってあげるのも悪くないなとしみじみ感慨に浸っていたところ、臨也の「聞いてないよそんなこと!」というこれまた時間帯を無視した大音量によって思考を遮られた。

「俺のこと……、そんな、す、す、好きだなんて……なんだよそれ……、なにそれなにそれ、何なんだよそれ俺聞いてないよ!?いつから!いつからそんなこと想っていてくれたの!?」
「うーん……いつから、なんて覚えていませんよ。さっきも言った通り、気づいたら好きになっていましたーっていう典型的なパターンなので、いつから明確に臨也さんを好きだったかなんてわかりません。でも強いて言うなら、やっぱり最初からですかね。恋かどうかは分かりませんが、最初に出会った時からあなたに興味を持っていたので、厳密に時期を特定するならその辺りです。あ。ところでこの場合、出会ったその日から好きだったってことは、これって世間では一目惚れっていうんですよね。うわー。僕、一目惚れなんてしたの初めてですよ。貴重な体験だったな……」

 あの感覚が一般的に言う一目惚れか。悪くなかったなぁ。(毎日が楽しくって、次は臨也さんといつ会えるんだろうとか、今度はどんな話をしてみようかとか、心を踊らせながら非日常を想像するのが楽しかった。)
 しみじみと回想していたら、臨也から「そんなの俺全然知らないよ気づかなかったよもっと早く言ってよ!」と睨まれた。理不尽だ。