ハッピーエンドはいつのこと?
そう言って薄い雑誌を手渡された。大きなフォントで「簡単・便利なおかず特集」と書かれている。手にとってぱらぱらめくると、おかずのレシピのほかに健康や美容のページが組まれていた。おそらく主婦向けなのだろう。
乾いた笑いが漏れる。プレゼント選びに関して、日本はイギリスよりはるかに上だ。相手をみて、相手の必要なものを選別することができる。むしろ的確すぎてアメリカはすこし困ってしまった。
君の気持ちはありがたいけど、と前置いてアメリカは言った。
「彼に料理の本をプレゼントするのは、今まさに人を殺そうとしている人に拳銃を渡すようなものだぞ」
彼に料理を作るよう教唆する以上、君も相伴に預かる義務と責任がある。
重々しく、まるで裁判所の判決みたいに宣言すると、日本は彼特有の言い回しで「新婚家庭におじゃまするなんて無粋なことはできませんから」と丁重に、だがきっぱりとひとつ首を振った。
作品名:ハッピーエンドはいつのこと? 作家名:あさめしのり