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あさめしのり
あさめしのり
novelistID. 4367
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意地っ張りアーサーのはなし

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キクもフランシスもアントーニョもギルベルトも王耀もローデリヒも、みんな可愛いアルフレッドが大好きでした。
 アルフレッドの太陽のような純真な笑顔は、見るものを幸せな気持ちにしたからです。
 そして、アーサーはそのことをとても誇りに思っていました。
 アーサーはいまだに村の嫌われ者でしたが、こんなにも愛されるかわいいこどもを育てているのは俺なんだと思うと、アーサーの胸は誇らしげな気持ちでいっぱいになったものでした。

「アーサー! なーにしてんの?」
 お菓子のいっぱいつまったバスケットを持って、フランシスが窓から顔をのぞかせました。
「あかん、こいつあほみたいな顔しとるわ」
 アルフレッドのことを考えていたアーサーの顔を指さして、アントーニョが言います。
「いや、アーサーがアホなのは昔からでしょ」
 それにフランシスが付け加えます。
「お前らも大概アホだろうがよ」
 しっかり者のギルベルトはあきれ顔です。
 そんな三人を、アーサーはこっそり三バカトリオと呼んで蔑んでいました。
 アントーニョ・フランシス・ギルベルトはいつも仲良くつるんでいて、アーサーは常々気に入らなかったのです。ましてや今、アーサーの機嫌は最悪でした。
「ピーチクパーチクうっせえんだよ、クソが! 失せろ!!」
 逃げろ! と三バカトリオは逃げ出しましたが、フランシスが逃げ遅れました。庭の小石につまづいたのです。
 フランシスはいつも身ぎれいにしていて、アルフレッドには到底かなわないものの、ふわふわのきらきらでした。だから、今日も気取った靴を履いていたのです。
 アーサーは、転んで逃げ遅れたフランシスをボコボコにしました。
「痛い! やめろって!」
 アーサーは無言で殴りました。
 フランシスは受け身になって、ダメージを減らそうとしましたが、いかんせん喧嘩慣れしているのはアーサーです。喧嘩の弱いフランシスはこてんぱんにやられてしまいました。
 そのうちフランシスは泣きだしました。

 フランシスをぽかすか殴りながら、アーサーはアルフレッドのことを思いました。
 アルフレッドはとても可愛い、まるで天使のような子です。アーサーを含め、村の大人たちはアルフレッドをたいそう可愛がりました。
 でも、そのことが却ってアルフレッドをだめにしてしまったのかもしれません。

 アーサーは村の教会へ走りました。
「かみさまお願いです」
 かみさまは、なんだとアーサーに聞きました。
「願いを取り消します。アルフレッドを、みんなから愛されるこどもにしないでください」
 では、どんなこどもにしようというのかね。
 かみさまは聞きました。
「みんなから愛されるこどもではなく、みんなを愛することのできるこどもにしてください」

 かみさまはにっと笑って、消えました。



 アーサーは走って家に帰りました。
「アル!」
「アーサー」
 家に帰ると、アルフレッドが庭の掃除をしていました。
「どうしたんだ、お前・・・・」
 アーサーが驚くのも無理はありません。アルフレッドはアーサーがどんなに疲れている時でも、庭の掃除はおろか、家のことなど何ひとつしたことなどなかったのですから。
 アルフレッドはすこしはにかんだように笑いました。
「俺、ほんとうはアーサーが大変なの知ってたんだ。俺もお手伝いしたいんだぞ」

 それからアルフレッドは掃除を片づけると、泣かせてしまったマシュー坊やのところに行きました。
 マシューは友達のシロクマに手を引かれて出てきて、「・・・もう叩かない?」と聞きました。
 アルフレッドはマシューの頬に仲直りのキスをしました。
その光景はとても微笑ましいもので、陰からこっそりのぞき見ていたアーサーは思わず目じりが下がるのをおさえられませんでした。

 アーサーは思いました。
 やはりアルフレッドはかみさまがくださったこどもなのだと。
 ですが、アーサーは今までと同じ理由からそのように感じたわけではありませんでした。

「俺も今すぐに出かけなくちゃ」
 そう思うといてもたってもいられず、大急ぎで家に帰ります。
 アーサーは庭でばらのいいのを選ぶと、花束を作りました。街の花屋さんで売っている、どの花束よりもりっぱなばらの花束です。
フランシスが大好きな真っ赤なばらをつめて、アーサーは出かけました。

 アーサーはフランシスの家のチャイムを鳴らしました。
 アーサーの家とは違う、こじゃれた白い壁の家です。
「はーい、どなた・・・・・」
折よく出てきたのはフランシスでした。
 アーサーはばらの花束を玄関から顔を出した彼につきだしました。
「・・・・・・ん」
「なに」
「ん!」
 フランシスの傷は手当されていましたが、痛々しい傷でいっぱいでした。冷静になってみれば、フランシスのきれいな顔や手足をこんなにひどくしてしまったことがずいぶん悪いことのように思われてきました。
それでも意地っ張りのアーサーは「ごめん」の一言が言えませんでした。
 フランシスは、押しつけられた花束とアーサーの顔を交互に見て、それから困ったような顔で笑いました。
 フランシスは、アーサーを赦す時きまってこの顔をするのです。
 フランシスはアーサーの育てたばらの花束を受け取り、その香りを嗅ぎました。

 アーサーはばくばくする心臓を押さえて、どきどき鳴る胸を押し込んで言いました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さっきは殴って悪かった」
 アーサーはそっぽを向いて、ぼそりと、それでも確かにフランシスの耳に届くように言いました。
 フランシスは一瞬驚いたような顔をして、それからきれいな顔をほころばせました。
「ケーキが焼けたんだ。アルの分も持って帰んなさいな」