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あたたかいからだ、じんわり

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「…訳、ですか?そうですね、まずお二人の雰囲気。過剰な親密さはどう考えても恋人同士としか思えません。次に、服装です。アーサーさんが巻いてらっしゃるストールはフランシスさんのでしょう?そしてフランシスさんのかぶってらっしゃるハットはアーサーさんのですよね。服の交換だなんてめったに、それこそ友人程度の関係ではしないはずです。三つ目に話を聞く限り、お二人は一緒にいることが多くておられます。昨日もフランシスさんのご自宅に泊まられたんでしょう?今週に入って2度目ですよ、お泊り。そして……」
「もう、もういい!本田!」
やめてくれお願いだから、とアーサーが叫ぶ。
「…すごいね、菊。まさか、そこまでみてるとはおにーさん思ってませんでしたよ」
「フランシス、感心してる場合じゃねえだろう!」
ぎゃんぎゃんと吼えるようなアーサーに落ち着いてくれと再度声をかけながら、すかさず菊へと視線を飛ばす。
―アーサーの血圧が上がって倒れちゃったらいけないから、この辺にしてもらえないかな?
―わかりました。
菊の察しの良さに感謝しながら、無事にアイコンタクトでの会話を無事果たすと椅子から立ち上がる。
「アーサー。お兄さん、何か飲みものとってくるよ。ご希望は?」
「紅茶……はないのか。珈琲でいい」
「りょーかい、一人で運ぶの大変だし、菊ちゃんも手伝ってくれる?」
「はい」


 大学の学食には無料の飲料ディスペンサーがあり、カフェもその例に漏れずに設置してある。
他の学食のものと違い白と黒でスタイリッシュなディスペンサーが置いてあるのはいいのだが、味にこだわって飲料を提供している場所に、質より量といった具合のこの機械を置くのはどうなのだろうか。大学側の考えることはたまによく分からない。
因みに飲料の種類は、水、緑茶、珈琲で、紅茶党のアーサーはいつも「紅茶だけないのはおかしい!」とぶーたれている。

「それにしても、菊。あの質問は不穏すぎるだろー?」
ぴっ、と珈琲のボタンを押しながらフランシスは言った。
「だって、気になってたんです。でもまさか付き合ってないとは思いませんでした。手の早い、というか守備範囲内なら恐ろしいほどの速度で狩猟していく貴方が手を出していないなんて」
「ちょ、ちょっと菊。おにーさんのことなんだと思ってるの?」