I Love Booooo!
アーサーはとてもいい飼い主でした。彼はブタフレッドの誇りでした。あえて贅沢を言うのなら、毎日のお風呂と最悪なネーミングセンスがなければなおいいのですが。
アーサーは、ブタフレッドを抱いてベッドに潜りました。やわらかなリネンが、ひとりと一匹をやさしく眠りに誘います。
アーサーは今や、貧乏苦学生ではなく立派な社会人です。ブタフレッドの主人は就職難の波を乗り切り、希望していた商社にこそ入れなかったものの、一応名の知れた大企業に就職することができたのでした。
ひとりと一匹は、もうキャベツ生活をしていません。ブタフレッドは、彼がどんなに忙しくても一日に二度ミニブタ用の餌をもらえますし、アーサーも人間らしい(時々妙に焦げ臭い気はしますが)文明的で健康的なものを食べています。湯上がりはビールとミルクで乾杯し、ひとりと一匹はその日一日の労をねぎらって眠りにつくのです。
ブタフレッドは思うのです。やはり自分の勘は正しかったのだと。前の主人に捨てられ、野良豚をしていたブタフレッドを拾ってくれたアーサーは、やはり偉くなっても、お金持ちになっても、ブタフレッドにつらくあたったり追い出したりしなかったのです。
「お前はあったかくていいなあ・・・」
うつらうつらしながら、アーサーがブタフレッドを抱きしめました。体温の低いアーサーからすれば、ブタフレッドなどまあ体のいい湯たんぽみたいなものなのでしょう。でも、それを甘んじてやろうと思う程度には、ブタフレッドはアーサーに恩義を感じていましたし、彼を愛してもいました。
今日もアーサーはブタフレッドを抱いて眠ります。濃い睫が、月明かりに照らされて白い頬に影を落としています。ですが、初めて会った頃のような痩せぎすでみっともない寝顔ではありません。栄養バランスのとれた食事も、生活を保障する仕事も、やわらかなベッドも、彼に安らかな眠りをもたらすのです。おっと、もちろん、今も昔も変わらず彼の腕のなかでぬくもりを提供する、偉大なるブタフレッドのことを忘れてはいけません。
ブタフレッドは、すでに眠りの世界の住人になったアーサーの胸に顔を埋め、その瞼を閉じました。
作品名:I Love Booooo! 作家名:あさめしのり