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21:35(TOA/ガイジェ)

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※時計の時刻表示(21:35)に萌えて突発的に出したという奇跡的な本(完売済)の一部抜粋。










―――――今まで、年配やら年上の人間の相手には、慣れていたつもりだった。
『つもりだった』と過去形になるのは、それを突き崩してくれやがった人間がいるからだ。
最初は単なる年齢詐称かと思っていたが、三十六歳のマルクト皇帝と幼馴染だというあいつは、間違いなく三十五歳。
周囲の人間も、軒並み三十代とは思えない若々しさを見せ付けていることから、これがマルクト軍人というものなのだろうか――――…と、隣で愛想笑いを浮かべているフリングス少将を見ながら、俺は例のあいつ―――旦那を思い出していた。

食えない笑みと、三十もそろそろ後半に入ろうかというのに衰える様子の見えない美肌の持ち主にして、性悪。
――――目下俺の一番の悩みの種であるあのおっさん――――…つまり、ジェイド。
ヤツの存在は、よくも悪くも、俺の考える三十路以上のどの人物にも当てはまらず、対応の仕方もどうしたらいいのか分からない…そんな悩みの元になっている。
老齢の人間のように労わるべき年でもないし、かといってただの中年とくってかかると、こちらが痛い目を見る。
殊仕事に関しては疲れというものを知らず、性分なのか、こちらが手伝おうかと声をかけても突っぱねる始末。
いつか誰かが『責任感の強い方なんですよ』と、羨望交じりの目をして言っていたが――――それはどうやら真実らしい。

最初は、あのおちゃらけたおっさんの何処に『責任感』なんてものがしまわれているのだか、と内心笑ったものだったが、あの鬼気迫る雰囲気を見せられると、その言葉に頷かざるを得ない。
今日も、フリングス少将の手伝いにかこつけて軍本部に入り込み、旦那の様子を見てきたが――――山のように積まれた紙に囲まれて、涼しげな顔でひたすらに手を動かしていた。
極力音を立てないようにドアを開けてみただけだったし、気配も消してはいなかったが、それでも旦那は気付いているのかいないのか、こちらを見ようともしなかった。
それだけ集中して気付いていないのか、それとも気付いていても反応している時間が惜しいと思えるほど、忙しいのか。
両方ありえる事なだけに、俺はなんだか笑えない気分だった。


「――――…と、これで最後です。本当にありがとうございました、ガイさん」

「え、ああ、気にしないで下さい」

本当に助かった、といわんばかりに感謝の意を表すフリングス少将に、俺は得意の愛想笑いで応じる。
笑いかけられて気分を悪くする人間なんて、そう滅多にいるもんじゃない。
案の定というか当然というか、少将もほっと笑いかけてきて、言葉尻に「お礼に、今度夕食でもご馳走しますね!」と付け足した。
「手伝おうか?」と笑いかけて―――――それに壮絶な笑みでもって「結構です」と凄んでくるような人間なんて……そう、旦那くらいなものだろう。
こっちは完全に善意からの言葉だったのに、重要書類が混じっているからとか何とか、理由を説明してくれればいいのに、それどころか、怒りを見せるだなんて。
全くもって心外だ。

「あの…ガイさん?」

「え!?あ、はいっ!?すいません、何の話でしたっけ」

「ジェイド大佐の事です。その……お時間があるようでしたら、大佐の様子を見に行っていただけないか…と」

少し言いづらそうに、フリングス少将は小声で言った。
元より兵士達の喧騒で声など響き渡る状態ではないのだが、それでも言いづらさ故だろう、少将の声は蚊が鳴くかのように小さく、聞き取りづらいものだった。

「すいません、手伝っていただいた上に、こんな事まで頼もうだなんて…ッやっぱり」

「いえ!お気になさらずに――――…しかし、一体どうして俺なんかに?」

慌てて、「聞かなかったことに」と言いかけたフリングス少将の言葉を遮って、俺は素直に疑問を口にする。
こっちは、共に旅をしたとはいえ、軍人として長く同僚をやってきた少将よりも付き合いは短い。
その上…軍の内情にも詳しくない、部外者だ。
様子を見てこようにも、機密に関わるものを見てしまう可能性だってあるし、忙しそうであっても、そういったものならば手伝うこともできない。
それを言うと、フリングス少将は困ったように笑った。

「その…同じ職責にある私が言うのも何ですが…、大佐はどうにも頑張り過ぎる所がありまして」

言いながら、ふと少将は遠い目をする。

「同僚なのですし、私や他の方を頼ってくだされば良いものを―――――…信用されていないのでしょうか、いつも一人で仕事を片付けてしまわれるのです」

勿論、優秀な方ですから、無理をしているつもりはないのかもしれないんですが、と小さく付け足すものの、その表情は不満げだ。

「なのですが、ガイさんには、なんでもない用事でも簡単に言いつけたりしていたので――――信用されているのかな、と」

「信用!?……俺が、ジェイドの旦那に…ですか?」

単にどうでも良い用事でこき使われている…という意識しかなかった俺には、意外な言葉だった。
驚いている俺を見て、少将も少し驚いたようだったが、しかしそれでも動じることなく、説明するように続ける。

「大佐は…自分の部下にも、滅多に用事を言付けたりはしないのです。第三師団の者は皆、大佐が言うならば喜んで雑用でもこなす、と息巻いているそうなのですが―――ガイさんに先を越されて、悔しがっているのですよ」

「はぁ…」

「ちょっとした用事を頼むだけでも、大佐にとっては信用しているという証拠なのだと思うんです。ですから…あの、出来そうでしたらお手伝いをしてきてくださいませんか?」

「少将、言葉を返すようで申し訳ないんですが…俺、一度断られて」

「お願いします!私達がかけあっても、『大丈夫ですから』の一点張りなんです。このままじゃあ、いつかどうにかなるぞ、と陛下からも脅されておりまして…ッ」

少将の言葉に、俺は思わず黙り込んでしまった。
…成る程、確かに陛下の気持ちもよくわかる。
ジェイドは、ひん曲がったその性格を除けば、優秀な臣下だ。
幼馴染という間柄なりに心配もあるのだろうが――――そうした甘えを許さないのが、ジェイドという人間だ。
それをよく分かっている陛下は、優秀な部下が暫らく使用不能になるような事態は避けたい―――という口上で、ジェイドを心配してやっているのだろう。
実際にジェイドは軍人…臣下としては優秀らしいし。
そのついでに幼馴染としても心配している、というのが陛下の内心なのではなかろうか。
……それを脅しのように少将に伝える、という行動はともかくとして。
ともあれ、俺が閉口するくらいには、フリングス少将の言葉には必死さが篭っていた。
それだけ陛下の脅しが強烈だったのか、それともここまで必死になる位、旦那が心配なのか。
俺にはどちらとも判断がつかなかったが、何故だか、どうにもすっきりしない気持ちだった。

「―――――分かりました。ですが、あんまり期待はしないでくださいね」

結局、少将に根負けするような態度で、俺はその願いを受け入れることにした。
実際、突っぱねられたとはいえ、旦那の様子は気になっていた。
作品名:21:35(TOA/ガイジェ) 作家名:日高夏