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C78新刊サンプル(ほとんど無害!(下))

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「本当は、今度っていつのことかい? と、言いたいところだけどね」
 そこまで口にしたところで、一度言葉を切る。ほっとした表情になる葉佩に奇妙なほどに光る目を向けて言葉を継いだ。
「石たちも君のいうことは聞くべきだって言ってる。仕方ない、今回は諦めるよ。でも本当に、近いうちに連れていっておくれよ。――気をつけて」
「ありがとう」
 破顔する葉佩に対しまたねと言うと、黒塚はふらふらとした足取りで葉佩の前から立ち去った。石は何でも知っていると歌う声を聞きながら、あれと葉佩は言った。
「……なんでおれ感謝してるんだ?」
「知るか」
 間髪入れずに皆守がそうつっこんだ。おかしいなおかしいなと首をひねりつつも、脱衣場から出ようとする葉佩の足を何かがつかんだ。
「だ・ぁ・り・ぃ・ん!」
 忘れてたと口走る葉佩の足首をしっかと掴みながら、朱堂が顔をあげた。
「アタシを連れていってちょうだい!」
 アナタのためなら怖いものなんて何もないわと口にする彼女に対し、葉佩は深くためいきをついてみせた。
「聞いてなかったかな。今回は危険だから誰かを連れていくなんてできないって」
「アナタのためなら火の中水の中よ!」
「そう言う問題じゃないの」
「――必中のダーツ、役に立つわ」
 あっと葉佩は声をあげた。確かに、《生徒会執行委員》・朱堂茂美の能力は、回避不能のダーツだ。対峙したときに、かなりの苦労を強いられたことは記憶に新しい。一つ一つがものすごく痛いわけではないのだが、同行者も含めてまったくよけられないというのは大きかった。力押しで短期決選をつけなければ、朱堂が一人でなければ。そうかんたんに決着はつかなかっただろう。
「夜会の日は黙っていなくなっちゃったじゃない。アタシもお役にた・た・せ・て」
 今回の相手の獲物は銃だ。遠距離からの援護が得られるというのはかなりにありがたい。
 いやんいやんずるいわずるいわと踏まれたままくねくねと身をよじる朱堂の姿と、彼の能力を天秤にかけ葉佩は葛藤する。それにけりをつけたのは、皆守の一言だった。
「《墓》の中で背中から襲われても知らんぞ」
「余計なこと言うんじゃないわよ皆守甲太郎」
 ぼそりと呟かれた皆守の言葉に、葉佩はぶんぶんと首を横にふった。そして改めてはっきりと口にする。
「今回はだれも連れては行かない」
 きぃとシルクのハンカチをかんで滝の涙を流す朱堂をおいて、葉佩はやっとこさ共同浴場を出た