彼らと取り巻く彼らの思惑
兄ちゃん馬鹿だよね。ニコニコとそんなことを言い出したフェリシアーノに、ルートヴィヒはぎょっとしてまじまじとフェリシアーノの顔を覗き込んでしまう。フェリシアーノはルートヴィヒと目が合うとにっこり笑ってやっほー、などと手を振った。さっきの発言は聞き間違えか何かなのではないか、とルートヴィヒは一瞬考えた。が、すぐにそれは都合の良い妄想でしかないと思い知らされる。
「だってばかじゃない、兄ちゃん」
繰り返された言葉にルートヴィヒは何とかえしたらいいものか逡巡する。沈黙を肯定と受け取ったのか、それとも何も考えていないのか、或いは沈黙と熟考の末にルートヴィヒがどんな考えを導きだすのかを期待しているのか、フェリシアーノはいつでも締まりなく開きっぱなしの唇から辛辣な言葉をぽんぽんと放り出した。曰く、だって兄ちゃん、何も気づいてないじゃない。俺、兄ちゃんがあんなに馬鹿だと思わなかった、云々。
ぽんぽんと出てくるフェリシアーノらしくない悪態にルートヴィヒが固まっていると、ひとしきり毒を吐いたフェリシアーノのルートヴィヒを見上げた。いつになく真剣なまなざしにルートヴィヒはたじろいだ。
「そんな馬鹿に兄ちゃんだけど、俺、兄ちゃんのことが大好きなんだ。だから、兄ちゃんが傷つくの、俺、いやだよ」
どんどんと語尾が小さくなっていって、しまいにはフェリシアーノはソファの上で膝を抱えて、こてんと額を膝にぶつけてしまう。ぐぐもった声は、最後に、恋って怖いね、と結ばれた。
ああ、と察したルートヴィヒは天を仰いだ。常にないフェリシアーノの言動は、どうしようもない血縁に関することだった。
「だってばかじゃない、兄ちゃん」
繰り返された言葉にルートヴィヒは何とかえしたらいいものか逡巡する。沈黙を肯定と受け取ったのか、それとも何も考えていないのか、或いは沈黙と熟考の末にルートヴィヒがどんな考えを導きだすのかを期待しているのか、フェリシアーノはいつでも締まりなく開きっぱなしの唇から辛辣な言葉をぽんぽんと放り出した。曰く、だって兄ちゃん、何も気づいてないじゃない。俺、兄ちゃんがあんなに馬鹿だと思わなかった、云々。
ぽんぽんと出てくるフェリシアーノらしくない悪態にルートヴィヒが固まっていると、ひとしきり毒を吐いたフェリシアーノのルートヴィヒを見上げた。いつになく真剣なまなざしにルートヴィヒはたじろいだ。
「そんな馬鹿に兄ちゃんだけど、俺、兄ちゃんのことが大好きなんだ。だから、兄ちゃんが傷つくの、俺、いやだよ」
どんどんと語尾が小さくなっていって、しまいにはフェリシアーノはソファの上で膝を抱えて、こてんと額を膝にぶつけてしまう。ぐぐもった声は、最後に、恋って怖いね、と結ばれた。
ああ、と察したルートヴィヒは天を仰いだ。常にないフェリシアーノの言動は、どうしようもない血縁に関することだった。
作品名:彼らと取り巻く彼らの思惑 作家名:はな