二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

キミの旋律番外編

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
「キミの旋律」番外編 ~はじめてのおつかい~



昼食の後、メイコとミクと三人で、洗い物をしていたら、マスターが突然、

「カイト、買い物に行こう」
「・・・は?」

思わず、拭いていた皿を落としそうになる。

「ちょっとカイト!お皿気をつけてよ!!」
「え!?あ、ああ!」

メイコの声で我に返って、慌てて持ち直した。

「えっと、あの、マスター?買い物って・・・」
「やだ?」
「え!?あっ、いえいえいえ!嫌じゃないです!!ただ、ちょっとびっくりして・・・」
「マスター、私は?」

ミクが、期待を込めた目でマスターを見るが、

「ミクじゃなくてカイト。ミクは留守番してて」

マスターに、あっさり拒否される。

「でも、なんでカイトだけなんですか?私だったら、特に準備しなくても出掛けられるのに」

メイコが不満そうに聞くと、マスターは首を振って、

「荷物持ってもらいたいから。メイコだと目立つし」
「大丈夫ですよ!私とマスターなら、姉と弟みたいだし!」

メイコの言葉に、マスターは首を傾げて、

「似てないから」

あっさり却下した。

「じゃ、カイト、一度パソコンに戻って」
「あ、はい」

俺は、すっかりふくれているミクに、「マスターの言いつけだから」と言い訳して、フキンを押し付けると、小走りでマスターの部屋に戻る。




マスターと外に!一緒に出掛ける!!


荷物持ちだろうと構わない。
いつもメイコばかりが一緒で、俺やミクは、マスターと出掛けたことなど、唯の一度もない。
その理由は、「目立つから」。

でも、俺達の姿は、あくまでマスターのイメージによって作られているので、マスターさえその気になれば、いくらでも変えられるのだけれど。

「外見を変えるのが面倒臭い」という理由で、いつも留守番させられていたのに。
いつも、帰ってきたメイコの話を聞かされるだけなのに。

はやる気持ちを抑えて、俺は、パソコンの中に戻った。



「カイト、いーいー?」

ほどなくして、マスターの声が聞こえる。
「大丈夫です」と答えると、体がふわりと持ちあがる感覚。


!?


ほんの僅かなひっかかりを感じて、思わず目を閉じた。

「大丈夫?」

マスターの声に、恐る恐る目を開けると、

「えっ!?あれ!?マスター!?おかしいです!!視界が茶色です!!」

驚きのあまり声を上げると、マスターが、

「サングラス。似合ってるね、カイト」

・・・へ?

マスターに言われて、顔に手をやると、眼鏡のふちに指が触れる。
そーっと外してみれば、薄い茶色のレンズが嵌った眼鏡だと分かった。

「あの・・・マスター・・・?」
「髪と目の色だけだと、気づく人がいるかもしれないでしょ?念には念を入れてみた」
「はあ・・・」

改めて自分の体を見下ろすと、服装も変わっている。
何時ものコートとマフラーではなく、ラフなシャツとデニムになっていた。
マスターが差し出した鏡をのぞけば、髪と目の色が黒に変更されている。

「何か・・・不思議な感じがしますね」
「嫌なの?嫌なら、無理には」
「え!?ち、違います!!嫌じゃないですよ!!ただ、その、見慣れないというか・・・」
「うん。あの格好じゃあ、外出れないでしょ?」


確かに。
大体、バトル以外で実体化してるなんて知れたら、大騒ぎになってしまう。

ただでさえ、マスターは、目立つのが嫌いなのに。


「じゃ、行くよ」
「はい。あ、マスター、これ」

俺は、机の上に置いてあった、携帯音楽プレーヤーを手に取って、マスターに差し出すが、

「うん、今日はいい」

マスターは首を振って、机に戻しといて、と言った。

「はあ・・・」

外に出る時は、必ず持っていくのに。
マスターがいいと言うのなら、いいのだろうと、俺は、携帯音楽プレーヤーを元の場所に戻した。



「マスター、今日は何を買いに行くんですか?」
「肥料。そろそろ、花壇の植え替えもしないとね」


庭の手入れは、マスターの担当。
植えてある植物と話しながら、色々決めているらしい。

「今度は、何を植えるんです?」
「んー。まだ決めてないけど。また、一年草にするかもね。周りがうるさいから」


周り・・・古株の木とか、多年草のことか。
何時も、ぶつぶつ言いながら手入れしてるけど。


「わがまま言うんですか?」
「そうでもないよ。まあ、カイトほどは、聞きわけてくれないけど」


え?


マスターは、首を傾げて、

「どうしたの?」
「あ、いえ、何でもありません」

マスターの言葉が嬉しいのと照れくさいのとで、俺は、眼鏡を直す振りをした。





近所のホームセンターにつくと、マスターは早速、ポット苗を物色する。

「苗も買いますか?」
「ううん、今日は買わない。うん、今日は連れて帰らないよ。ごめんね」

前半は俺に。後半は苗に。
俺にとっては見慣れた光景だけど、隣で苗を選んでいた年配の女性が、訝しげな視線を向けていた。
マスターは、気にする様子もなく、今度は球根売り場に行く。

「球根って、喋りますか?」
「ううん。寝てるからね」
「ああ、そうですよね」

マスターは、球根をそっと置くと、店内に向かった。

「あれ?マスター、肥料は外の売り場ですよ?」
「うん、知ってる」

それでも、マスターは店の中に入っていったので、俺も後を追う。

「シャンプーの詰め替えがなくなりそうだから、買っておこうか」
「はい」
「きょろきょろしてると、迷子になっちゃうよ?」
「あ、す、すみません」

慌ててマスターの隣に並ぶと、マスターはちょっと笑って、

「冗談だよ。カイトの居場所は、すぐ分かるから」
「え?」
「はぐれても、ちゃんと迎えに行くから。心配しないで」
「え、あの・・・・・・はい」

シャンプーとリンスの詰め替えを買うと、マスターは再び外に出ていった。

「ちょっと重いけど、2kgの買っていい?」
「いいですよ。大丈夫です」

マスターには、ちょっと重い荷物を、俺は腕に抱える。


こんな時、自分が男性型でよかったと思う。
マスターの役に立てる。マスターが、俺を頼ってくれる。

それが、何より嬉しい。


レジを済ませて、マスターと家路についた。



「そこに置いといてくれる?後でするから」
「はい」

家に帰って、まず肥料の袋を、庭に置く。

「ありがとう。カイトが一緒に来てくれて、助かった」
「俺も、マスターと出掛けられて、楽しかったです」
「そう?それは良かった」

そう言ってから、マスターは欠伸をして、

「ちょっと眠い」
「少し横になってください、マスター。俺が起こしますから」
「うん、ありがとう」


家の中に入ると、マスターのお姉さんが、一人でお茶を飲んでいた。

「ただいま」
「ただいま戻りました」

マスターのお姉さんは振り向くと、

「お帰りー。何買ってきたの?」
「肥料。後、シャンプーとリンスの詰め替え」
「ありがとー。助かる」

マスターは、リビングを見回して、

「メイコとミクは?」
「拗ねてパソコンに戻ってる」
「そう。分った」
「マスター、これ仕舞ってきますね」

俺が、詰め替え用を示すと、
作品名:キミの旋律番外編 作家名:シャオ