嘘
「暑い」
「ふふ、そうですね」
「じゃあちょっとは離れろよ」
「嫌ですよ、怖いんですから」
「はぁ?もう住宅街だろ」
「怖いものは怖いんです」
アーサーさんの背中はやっぱり大きくて、昔と何も変わっていなかった。
彼は嫌がってるけど、それを無視して額を背中にくっつけた。
「何してんだよ」
「んー、ちょっと眠くなっただけですよ」
「怖かったんじゃないのかよ」
文句は言いながらも彼はしっかりと私を背負ってくれていた。
あぁ、どうかお願いします。
お願いしますから、ずっと彼の側にいさせてください。
それ以上は何も望みませんから。
「暑いですね…」
「だから離れろって」
「ふふ、嫌です」
おわり