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うん、それ無理。

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俺はどうしようもなく人を愛してる。

誰かって?違うよ、前から言ってるじゃないか。
俺は『人間』っていう存在全てを愛してるんだ。
俺にしか理解できない悦楽に浸るためにね。
…。
君はさ、いつも俺にそういう変態を見るような目を向けるけれど、
君だって相当な変態なんだよ?
首無し女に情欲を感じるだなんて普通にはなかなかできない所行だ。
ああ、いやいや別に彼女を貶めてるわけじゃないって。
むしろ俺が貶めたいのは君の方…
おっと、話が逸れたね。
つまりさ、俺は毎日毎日人を愛する為に大忙しなわけだ。
如何なる方法を以って愛でるか、それを考えるのに脳は常にフル回転してるわけだよ。
1分1秒、いや0コンマ何秒だって惜しいくらいさ。
なのに、
どうしてあいつはいつも俺の思考を乱すんだろうねぇ。邪魔で仕方ないよまったく。
ねえ、どうしたらいいと思う?どうやったら追い出せるんだろう。
君さぁ、仮にも医者だろ?治してよ、

シズちゃんっていう病原体に感染しちゃった俺の頭をさあ。


 ♂♀


折原臨也は、酷く苛立っていた。
自らの商売道具であり、自らが博愛主義に身を投じるための手段である情報に対して。

苛苛、苛々、いらいらと―――――



「なぁ、知ってるか?」

街の喧騒と共に、とある男のついてのあらゆる噂が執拗に、
それでいて淡々と耳朶に触れてくる。
あるいは真実。あるいは虚構。様々な色に塗りたくられた噂たちは留まることを知らず、
堰を切ったように街を濡らしていく。

「平和島静雄っているだろ?」
「ああ、バーテン服の」「池袋最強の!?」「そうそう」
「え、あいつ死んだんじゃないの?」
「あの化け物みてーに強い奴だろ?」「死ぬようなタマかよ」「ですよねー」
「こないだポスト投げてた」
「あいつ黒バイクと仲良いみたいだぜ?」「首無しライダーと!?」
「あれ、ゴミ箱も投げてなかった?」「あ、それオレも見た」
「標識振り回してた」「人振り回してた」「えええええ」
「いちご牛乳飲んでた」「えええええ」
「ハンバーガーもふってた」「もふってたってなんだよ」
「前、俳優の羽島幽平と一緒に居た」「なんで!?」
「ドレッドヘアーの奴と露西亜寿司入ってくの見たぞ」

―――むかつく。

「いやいやいや、本当静雄さんはんぱないっすよね。みました?さっきの取り立て!」
「池袋の撲殺天使だよね!」
「さしずめ、エスカリボルグは標識ってトコっすかね?」
「いやいやゆまっち、ガードレールも捨て難いよ?」
「おいお前ら少しは静かに――――」
「「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー」」
「おい!」
「てか此間さぁ、コンビニでめっちゃプリン眺めてたんだけど甘い物すきなのかな?
 オトメン?ギャップ萌えはあはあ!」
「狩沢さん…。いつか本当にギタギタにされるっすよ…」
「甘い物はどうだか知らねえが、辛いのは無理っぽいぞ。
 寿司食って涙目になってたってサイモンが…」
「ちょ、ドタチンその話kwsk!」
「待つっす門田さん!世の中にはその涙目になるほどの辛さを自ら欲して
 生きるM体質の人もいるんで、静雄さんが辛い物を苦手かどうかはry」
「お前らオレのワゴンで暴れんなよ」

―――ああもうむかつくなあ。すごくいらいらする。
  なにそれ?俺、そんなシズちゃん知らない。


 ―――――甘楽さんが入室されました―――――

甘楽:どもー!みんな大好き甘楽ちゃんでーっす☆
田中太郎:あ、甘楽さん
セットン:ちわー
甘楽:あれぇ?なんですかなんですか?誰の話ですか
罪歌:こんにちわ
罪歌:へいわじま しずおさん です

―――ああああ。くそ、まただ。また、俺の知らないあいつの情報が、

セットン:彼、よくバニラシェーキとか飲んでますよね
田中太郎:えっ、マジですかwなんだか意外ですねー
罪歌:わたしも みたこと あります
バキュラ:そーなんすか?ただのヤバい人だと思ってましたけど
セットン:いや、そんなこともないですよ。最強の名に偽りはないですがw
田中太郎:あれ、セットンさん話したことあるんですか
セットン:あ、いえ。仕事の上司っぽい人と話してるのを見かけたので
バキュラ:なるほど
罪歌:え
バキュラ:?

<内緒モード> セットン:ごめんね杏里ちゃん!今のは私の顔がわれると
             ちょっとマズイから嘘吐いただけなんだ
<内緒モード> セットン:ほら、静雄の知り合いっていうと割と
             顔知られてる人多いし

罪歌:すみません
田中太郎:??
狂:私としたことがだいぶ遅れてしまいましたね!ごきげんよう甘楽さん。
  ところで、私もよく小動物と戯れる静雄さんを見かけますよ?
  懐いてくる犬猫に目をやっては外しを繰り返す彼は、大変もどかしくもあり
  微笑ましくもあり、傍観する私としては至福の時間でありました
参:恐る恐る頭なでてた
バキュラ:えええ!!wなにそれ見たいw

―――あふれていく、あふれていく。
   俺がこの世でたった一人だけ嫌悪する存在だってのに、

甘楽:あ、なんか急用入っちゃいましたぁ!今日はもう失礼しますねっ☆
バキュラ:あれいたんですか
甘楽:酷い!?
田中太郎:サヨナラー
罪歌:さようなら
狂:甘楽さんそれではまた今度
甘楽:おかしいな、なんか追い出された感が…
   皆さん私がいなくて寂しくなっても知らないんですから!ぷんぷん!
バキュラ:ねーおm9つ(^Д^)プギャー

 ―――――甘楽さんが退室されました―――――

―――俺の知らない平和島静雄が無数に存在しているなんて。


―――いらいら、する。

俺の知らない平和島静雄がいることに。
不特定多数の人間たちが、平和島静雄の情報を得ていることに。
不特定多数の人間たちに、平和島静雄の情報をふりまく平和島静雄本人に。

そして何より、

俺の知らない平和島静雄が存在することに苛立っている俺自身に。

どうしようもなく―――――

「何度来るなって言ったら理解してくれんだぁ?いーざーやァー」

―――ああぁあぁああぁぁぁああぁいいかげんにしてくれ!


折原臨也は、酷く苛立っていた。
自らの商売道具であり、自らが博愛主義に身を投じるための手段である情報に対して。
ただただ知らないことを知りたくて、苛立っていた。

「おい聞いてんのかノミ蟲」

―――知りたい。

「シズちゃんのせいだ」
「は?」

―――知りたい。
   知らないということがこんなにも歯痒いものだということすら知らずにいた俺が、

「だからこれくらい許されるべきだよねぇ」
「手前、何の話して…」

―――今たった1つだけ知っているのは、君に対する俺の感情が、
   殺意や嫌悪だけではなくなってしまったこと。
   
   だが別にそんな情報が欲しいわけじゃない。
   
   俺はただ何よりも、誰よりも

   


   君のことが知りたい。


作品名:うん、それ無理。 作家名:ノイヤ