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戦争サンド、お持ち帰りで

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『和食みかど』の隣には『スナックしず』がある。
両店は店員同士も家族のような交流があり、子供たちもまるで猫の子のようにいっしょくたにして育った。
そう、兄弟のように思っていた。
・・・僕が15歳になるまでは。









年老いた両親が市場に出かけ材料を買いに行くと、僕は開店の準備に追われる。
これも毎日の日課だ。
今朝も無心になって手早くすませていると、突然外からドンガラガラと派手な物音が聞こえてきた。

「え・・・」

野良猫にしては大きすぎる。
両親も帰ってきていないし、もしかして・・・・・泥棒とか?
思わず研いでいた包丁を取り出し、護身用に隠し持つ。振り回せる自信はまるで無い。
本当に泥棒だったらどうしよう。
ああ、でも・・・・・・やっぱり僕が守らなきゃ!
祈るような気持ちで裏口を開け、ちらりと外の様子を伺う。
路地には誰もいない。
一応の確認のために外に出たが、やはり人っ子一人いなかった。

「あ・・・っ」

しかし、そこで予想外の人に会ってしまい思わず声が出る。

「静に・・・、静雄さん」
「・・・帝人・・・?」

同じように物音に気づいたのか、まだバーテン服のまま路地裏の青いゴミ箱を片付けている静雄に出会った。
久しぶり過ぎて声がうまく出てこない。

「お、はよ・・・」
「・・・・・・おう」

互いに顔を見ないまま挨拶する。声は緊張に震えていた。
ずっと一緒に育った幼馴染。なのに今はこんなにも存在が遠い。
向けられた背中に拒絶の色が見えて胸が潰れそうになる。

「・・・じゃあな」

青いゴミ箱を片手で位置に戻すとそのままスナックの裏口に戻って行ってしまった。
・・・声をかけたかったのに。



『・・・・・・俺とお前は住む世界が違うからよ・・・・・・』



そう言われて距離を置かれるようになり、一体どれくらい経ったのだろう。
自分の何が悪かったのか、静雄がどう思ってその言葉を告げたのか、あの日からずっと分からないままでいる。
あの時と同じようにじわりと緩む涙腺。
声も無く泣いてしまったあの瞬間から、僕と静にいの間はぎこちないものになった。

「・・・何やってんだろ僕は」

ため息をついて店に戻ろうとすると、青いゴミ箱の群れの中存在しない筈の物が見えた。
再度よく目を凝らす。

「・・・・・・・・・・・・・。」

人の足がにょきっと生えていた。
男の足だ。

「・・・・・・・・・・・・・・え?」

動揺しすぎた声はやけに冷静に路地裏へ落ちた。