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戦争サンド、お持ち帰りで

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「・・・・・・あれぇ?」

気の抜けた声が座敷の奥から聞こえた。目が覚めたらしい。
もしかしたら匂いに気づいたのかもしれない。
よろよろカウンターへやってきた男の顔はまだ疲れきっていた。
ようやく目が合う。

「・・・・・・だれ?」
「『和食みかど』の竜ヶ峰帝人です。そちらは?」
「俺は・・・折原臨也。ひょっとして君、行き倒れてた俺を助けたわけ?」

のろのろとカウンター席に座り心底珍しいものを見るような顔されて、幾分むっとする。
俳優のように頬杖をつくポーズが似合う。
折原臨也という男は、人を食ったような態度をする男だ。

「食べ物屋の前で行き倒れるとうちのイメージが悪くなるんですよ」
「はは、そりゃそうだ」

声も良い。ほんの二言三言で見慣れた店内があっという間にこの男の支配する空気に変わってしまった。
堅気の人間じゃないのかもしれない。
僕はそう算段するとお皿を彼の前に突き出した。
焼きたての卵焼きだ。
彼は目を丸くした。

「えぇ?なに、いいの?俺金ないよ?」
「行き倒れたの助けたんだから、知ってますよ。それ食べて出て行ってください。
僕はまだ手伝いの身なんでこれは商品じゃありません。
あくまでも僕の・・・・・・練習品です」

両親が市場に行き、開店の準備を終えたお店でメニューの練習をするのは僕の密かな日課になっていた。
材料が少しずつ減っているのだから気づいているだろうが何も言われない。
この店を継いで欲しいと言われたことは一度もなかった。練習も自分から始めた事だ。
言外に折原臨也を助けたのも店は関係無く、僕個人でやったことを伝える。

「ふぅん。練習品、ねえ・・・」

折原臨也はそれ以上言わず卵焼きに箸をつけた。
視線が完全にお皿に固定されたのを見て、やっぱりお腹がすいていたのかもしれないと思う。
もくもく。
見た目よりずっと綺麗に食べていく。しかし何も言わない。
僕はボールを洗いながら無言の空間が苦痛になってきた。
なんで何も言わないんだろう。
この人、いかにもまずいとか下手とかズバズバ言ってきそうなタイプなのに。

「・・・ごちそうさま」
「どういたしまして」

遂に一言も発することなく、食事を終えた彼は箸を静かに置いた。

「俺さあ・・・」
「はい」
「手作り料理好きなんだよねえ」
「・・・はあ」

覚悟していた言葉は来なかった。
正直、素人に毛が生えたような料理なので辛辣な批評が来ると思ったのだが。
彼は優雅にカウンターに腕組みして少しだけ身を乗り出す。まるで常連のような雰囲気だ。

「料理人の人間性?そういうのが分かる料理が好きなんだ。食べてて楽しいじゃない」
「・・・・・・はあ」
「帝人くん。竜ヶ峰帝人くんかあ」

くつくつと肩を震わせる彼は、嬉しくてたまらない様子だった。

「お店の名前が同じだね。きっと君のご両親は、君が大事で仕方なかったんだねえ」

突然そんな話をされ、僕はあまりの不審さに眉をひそめる。
その表情にさえ彼は喜んだ。

「・・・・・・大当たりだ」