【パラレル】空中現実七番地【イザシズ】
シャワーの音で声が聞き取り辛いかもしれない。そんな気遣い少々と多大な悪戯心を込めて、臨也は静雄の耳元で囁いた。
頭を触られたから、とは違った意味で静雄の身体が跳ねる。薄手とはいえタオルを被せられた状態では、視界はうっすらとしか確認出来ないだろう。五感の一部を塞がれた状態で、残った内の一つを徹底的に感じさせる。意識がそこに集中してしまったようで、静雄の耳は真っ赤に染まった。
「お客様、お湯加減が少々熱すぎましたか?」
「テメッ……絶対あとで一発ぶん殴る……!!」
視界を塞がれた静雄が見ていないと知りつつも、臨也は白々しい笑顔を浮かべて尋ねた。
怒りからかはたまた聴覚を直に震わされた羞恥心からか静雄の拳は震えている。まるで毛を逆立てた猫のようだ。
猫の気を静めるように臨也は静雄の頭を撫でた。勿論先程彼が反応を示した部分を狙うようにして、丁寧に何度も何度も。
「今はまだ猫でいてね、シズちゃん」
心なし指通りが滑らかになった髪を遊んで、臨也は更に言葉を注ぎ込む。
「君をケモノにするのは俺なんだから
」
100215
作品名:【パラレル】空中現実七番地【イザシズ】 作家名:てい