二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

drrrイザシズログまとめ

INDEX|1ページ/5ページ|

次のページ
 

魔法を期待する心は捨てたんです


「本当はさぁ」
「ッ」
「俺だって人間だし、男な訳。生物学的にいっても刻まれた遺伝子の命ずるままに動いても、本来なら女の子にこういった情欲を向けるべきなんだよね」

 真っ白なシーツに散らばる不自然な金糸。醜いとか、不格好とか、そういう腹がぐらぐらいきそうな感情はちっとも涌いてこない。
 傷み切っていそうなその髪に指を通すと、意外にもすんなり梳けてしまった。一本一本の細さに、思わず感心してしまう。

「は、ぅ……!」

 大人しく押し倒されている彼の存在が信じられない。ただし、俺は彼に触れているけれど、彼の手はシーツを掴んで離さない。
 ツゥ……と血が流れる感覚に似た音を立てて、俺の指は彼の身体を下降する。

 不要なタイはベッドの下に。
 遮るシャツは破いて開けさせて。
 露わになった身体に、指を這わせて舌で追う。

「その力を、一瞬でも無力なものにしてみたくない?」
 なーんて、悪魔の囁きの方が何倍も現実的に思える俺の誘いに乗ったのは、他でもない彼だ。

「俺に押し倒されてさ」
「ん、くッ」
「こうやって舐められて」
「あ、ぅ……んっ!」
「感じてんのに気持ち悪いんでしょ? ねえ、シズちゃん。今、どんな気分?」

 は、と吐き出された熱っぽい吐息に罵倒が混じるかと思えば、そんなこともなく。眼光はそのままなのに、潤んだ瞳がおかしかった。
 胸の飾りを舐め上げて、片方は指先でこねる。時々唇で吸ってみては、間抜けな音と共に愛撫を加速させた。

「ああ、さっき言った情欲の話なんだけど。女の子抱いてる方が気持ちいいよ? あの、全部受け止めてあげるっていう笑顔も笑えるし、必死に男を振り向かせようと喘ぐ姿だって可愛いげあるし」
「お……前の、んっ、抱いてきた女が、あ……! 性悪すぎてっ、だらしなかったんじゃ……ねぇ、のっ」
「あははは、ナカはあまりだらしなくなかったよ? そりゃシズちゃんに比べたら、緩過ぎるぐらいだったけど」
「し、ね! あっ、ヤ……!」

 我ながらイイ笑顔を浮かべていると思う。乾いた笑いも相俟って、よりいっそう寒い。
 その乾燥具合を補うかのように、彼のナカに指を突っ込んだ。湿り気を帯びた音が部屋に生まれる。
 第一関節まではすんなり入る辺り、彼の身体もこの行為に慣れてきているらしい。浅く息を吐く唇が何故か憎たらしくて、とりあえず己の唇を重ねておいた。
 目を閉じるのも面倒で、見開いたまま唇を食んで舌を絡ませる。一旦唇を離せば、往生際の悪い蜘蛛の糸みたいに唾液が伝った。

「さあ、魔法を見せてあげるよ。シズちゃん」

 自身を取り出して軽く扱く。緩く立ち上がったそこは、笑えることにシーツの海に沈む彼の姿を見たところで、あまり硬さを増すことはなかった。ああ、よかった。どうやら俺の身体は、まだ健全な青年らしい。
 指二本分、関節一つ分、時間にしたら一分も慣らしていない気がするソコに、自身を宛がって―― 一気に貫いた。

「――――ッ!」

 髪よりはくすんだ茶色の目が限界まで見開かれる。のけ反った咽に、ふいとナイフを突き刺したくなった。
 ギュウ、と締め付けてくるナカに、思わず笑いが零れた。そこでようやく、俺自身が快感を感じたらしく硬さを増した。

「ほら、シズちゃん。今、君は魔法に掛かってるんだ。伸ばしなよ、人間に。俺に」

 魔法の呪文は一度じゃ効かない。だから二重三重とぐるぐる展開して、頭がぐらぐらになるまで掛けてあげる。

「今、君は無力だよ」

 はっとしたように、彼の茶の瞳とかち合った。声帯はどうしようもないらしく、いつもより高く上擦った声を掠れさせながら発している。
 それまでシーツの波を捕まえていた手が、ゆっくりと外された。不安と快楽に揺れる瞳と同調しているとしか思えない。未だその手は行き場をなくしてさ迷いかけている。

「ほら」

 じれったくなったのは、耐え切れなくなったのは。
 考えるのも面倒で、律動を速めて先を促す。
 一度瞳を伏せて、まっすぐにこちらを見た。

「いざや」

 彼は俺の背中に腕を回した。
 何も考えたくない、というようにぱさぱさと汗で房になった髪を振り乱す。
 爪を微かに立てられる。ダメだ、ダメだ、彼に魔法は掛かっちゃいない。

「シズちゃん……抱き締めなよ、君が焦がれて止まない温もりだよ?」
「いざ、や……!」

 ぎゅう、と抱き締められた腕。締め付けてくる結合部。
 どくりと大きくなった自身は、本能なのか理性なのか。快楽を貪り貪られるために、身体は思考をどんどん遮断していく。
 ミシミシと軋むベッドの音が、思考が遮られるシャッター音と重なる。
 閉じられる寸前の俺が理性で浮かべた笑みは、瞳を閉じた彼の目には焼き付かない。



080328


抱かれている時だけ、力が抜けるシズちゃんとか。無力な瞬間ってそんなもの。