エヴァログまとめ(353オンリー)
「青色にびっくりしてしまって、それが本だと気付くにも遅れたくらい」
カヲルの話をシンジはきょとんとした顔で聞いている。突然こんな話をされれば誰でも同じような顔になるだろう。
「青色にびっくりする人なんて初めて見た」
この話こそシンジに笑って欲しかった。だがシンジは笑うどころかきょとんと驚いた顔のまま、何てことのないように呟いただけだった。
「笑わないんだ?」
疑問とからかい混じりにカヲルが問う。
シンジの表情は柔らかくなったが、その笑みは面白くて笑うものとは異なっていた。相手を安堵させる質の笑みだ。
「カヲル君だし。何でもありかなあ、って」
「酷いなあ」
ふふっ、と控え目に二人で笑い合う。
シンジに本を返すと、彼は持って来た時と同じように大切に胸に抱いた。
白いカッターシャツに抱き込まれる青。あれは空ではなく海だと言う。
ならばあの白は雲ではなく白波か。
どちらにせよ白と青の比は逆転している。反転した何かだ。
「僕が生まれたところは青に程遠くてね」
空でも海でもないものにカヲルは目を細める。
「生命のスープと命の灯の色を知っているかい?」
「え?」
「橙に紅なんだ。だから僕は寒色にさっぱり縁がない」
今度はシンジが訳が分からないと困惑した表情を見せた。
当然の反応だろうな、とカヲルは初めから納得している。
シンジは眉を下げて恐る恐る口を開いた。
「……カヲル君ってさ、やっぱり不思議だよね」
「人より少し違うところを見てきただけさ」
だから君が大事に抱く青の恋しさが分からない。
090726
作品名:エヴァログまとめ(353オンリー) 作家名:てい