二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

コードギアスログまとめ(スザク受け中心)

INDEX|12ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

ばいばい、明日は遠く落ちていった(死ネタ・ジノとスザク)



 カツカツカツ、と傷も埃もない床を真っ黒なブーツは踏み鳴らす。
 スザクは綺麗に整えられた道よりも、獣道のような土の上を歩いていた年月の方が長かったから、こうしてラウンズに昇格した今でも硬い靴底の音に慣れはこない。どことなく、すべて弾き返されている気分になるのだ、革靴の足音は。吸い込まれそうな空間であるのに、音は響いて、そして受け止められずに跳ね返る。

「じゃあ明日はナナリー殿下と一緒に式典参加?」

 政庁内をジノとスザクは歩く。当然足音は二つだ。歩幅の違いからか、二つの足音にはばらつきがある。一つは音の間隔が広く、深く沈み込むような音。もう一つは一定の間隔で細かく刻まれ、浅く次々と音を連ねていく。前者がジノで、後者がスザクだ。

「そうだね。ナイトメアはあくまでお飾りだけど……出発前にある程度調整しておいた方がいいかもしれない」
「いざって時に困るもんな」

 ジノは手にしたファイルで自分の肩をとんとんと叩いた。スザクは構わず前へと進む。

「まあ、いざってことはないと思うけど」
「うん? なんか言ったか、スザク」
「なにも」

 ここにいないアーニャは今、ナナリーの元で明日の式典に関する確認をしている。述べる祝辞から退路の道順まで、アーニャのことたがらさらりと流す程度の確認しかしないだろうが、やるのとやらないのでは全く違う。前日の確認事項が当日、頭の片隅に少しでも残っていれば良いのだ。
 確認はするが、恐らく式は何も起こらず滞りなく終わるだろう。あらかじめ式典にはナナリーが出ることを知らせてある。そして何よりも、今回の式典がナナリーが自ら参加したいと言ったものなのだ。
 確かに、あの反逆者が妹を奪還するには絶好のチャンスだろう。しかしそれは、ナナリーの意志を無視する形となる。どれだけ素顔を隠しても、彼の行動は妹中心。その点だけなら、それほど警備に頭を捻る必要もなかった。

「じゃあ、僕はこっちだから」

 スザクはナイトメアの調整、ジノは警備配置の確認。

「またな、スザク」

 スザクと別れることは名残惜しかったが、互いに仕事と責任がある。ジノは当たり前のように理解していたから、これといって一時的な別れに感慨も何も抱くはずがなかった。
 しかしそれは、スザクが発したことばであっという間に拡散する。

「ばいばい、ジノ」

 左の道へと曲がろうとするスザクの手を、慌ててジノは掴んだ。言葉で引き止めるよりも早く、だ。

「え……あの、ジノ?」
「スザク、それは駄目だ!」
「へ?」

 ジノは噛み付くように言った。眉をぎゅうと上げて、その目は険しい。スザクは豹変したジノの態度に、訳が分からず首を傾げた。

「その言い方は、駄目だ」
「その言い方、って……」

 ジノはきつく言うが、スザクには何のことだか皆目見当がつかない。先程までの自分の発言に何か失態があったのだろうか。順を追って回想していくが、特に思い当たる失言はないように思う。
 スザクは掴まれた左手に顔を顰めそうになりながらも、右手だけで降参のポーズを取った。時間も圧していることだし、早く解放してもらいたい。

「ジノ、申し訳ないけど僕には君の言いたいことがさっぱり分からないよ」

 困った顔をしたスザクを見て、ようやくジノも冷静さを取り戻したらしい。スザクの左手が解放された。

「ごめん、手痛かったろ?」
「いや、平気だよ……っと、ごめんジノ、時間がないから理由は明日聞くよ!」
「っ、おい、スザク!」

 言うか早いか、スザクは角を曲がって向こう側へと消えていった。
 ぞくりと、ジノの背筋を形容しがたい何かが走った。





 式典当日。
 スザクの予想は半分当たり、半分外れた。
 黒の騎士団ではなく違うテログループが式典に乱入してきたのだ。ナイトメアなど必要としないゲリラ戦。それが当然であるかのように、スザクが先陣を切って走り出した。

「スザク!」

 ジノが叫ぶ。
 少しだけ振り返ったスザクが、ジノを見て唇を動かした。

「    」

 スザクがジノに向けて言おうとした言葉も
 スザク、もう一度叫ぼうとしたジノの声も

 劈くような銃声に掻き消された。


(なあ、スザク、知ってるか?)
(“See you.”も“Good bye.”も別れの言葉ではあるけれど)
(“Good bye.”は、二度と会わないときに言うんだ、明日の約束をするときには言わないんだよ)

「ばいばい、スザク。また明日」


 白の部屋に横たわるスザクに、ジノは痛々しい笑顔を向けて、部屋を出た。



080807

・“Good bye.”の定義は怪しいですが、確かそうだったと思います(うろ覚え)
ばいばい、ってカタカナ表記よりもひらがな表記の方が別れっぽい。